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解雇された選手が、その球団のロベルト・クレメンテ賞候補に

宇根夏樹ベースボール・ライター
ハンター・ペンス Aug 11, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロベルト・クレメンテ賞の候補が、発表された。各球団1人、計30人のなかから、原則として1人が受賞する。

 今年の候補のうち、ニューヨーク・ヤンキースのジャンカルロ・スタントンは、故障者リストに入っている。昨シーズンに続き、今シーズンもほとんど試合に出場していない。ボストン・レッドソックスのミッチ・モアランドは、8月30日のトレードで、サンディエゴ・パドレスへ移籍した。

 モアランドと同じく、サンフランシスコ・ジャイアンツのハンター・ペンスも、球団にはいない。それだけでなく、他の球団にも在籍していない。8月24日に、ペンスはジャイアンツから解雇された。現在はFAだ。今シーズンの打率.096(52打数5安打)と37歳の年齢からすると、このまま選手としてのキャリアを終えても(そうなってほしくはないが)おかしくない。

 退団後のペンス、と言えば、8年前にはこんなこともあった。2012年8月21日、フィラデルフィア・フィリーズは、球場に来たファンにペンスのボブルヘッド(首振り人形)を配布した。だが、この時、ペンスはフィリーズにはいなかった。トレード・デッドラインの7月31日に、フィリーズからジャイアンツへ移籍した。ちなみに、入れ替わりにフィリーズへ移った3人のなかには、この3年後に広島東洋カープでプレーするネイト・シアーホルツがいた。

 プロモーション・デーに配るボブルヘッドは、通常、シーズン前に作られる。廃棄するのも、もったいない。ただ、ファンが受け取ったのは、ボブルヘッドだけではなかった。その箱には、ペンスからのメッセージが入っていた。そこには、「ありがとう、フィリーズのファン、素晴らしい思い出を。僕がもうフィラデルフィアにいないにもかかわらず、ボブルヘッドが配られたことを喜んでいる。これによって、僕がいたことを覚えていてほしい。キャリアにおいて、決して忘れられない1年だった」と綴ってあった。

 ペンスは、2011年の夏にヒューストン・アストロズからフィリーズに移り、翌年の夏にフィリーズからジャイアンツへ去っていった。

 なお、そこからずっとジャイアンツにいたわけではない。昨シーズンはテキサス・レンジャーズでプレーし、オフに再びジャイアンツへ戻った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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