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サイ・ヤング賞の行方。ダルビッシュに「有利な材料」は「不利な材料」にもなり得る!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)Aug 29, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現在、ナ・リーグには、40イニング以上を投げて防御率1点台の投手が4人いる。防御率1.47のダルビッシュ有(シカゴ・カブス)、1.60のマックス・フリード(アトランタ・ブレーブス)、1.76のジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)、1.80のザック・ギャレン(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)がそうだ。

 防御率だけでサイ・ヤング賞が決まるわけではないが、今のところ、彼らが有力な候補であることは間違いない。

筆者作成
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 9月4日以降のスケジュールからすると、4人のなかで最も有利なのは、ダルビッシュだろう。カブスの23試合中10試合は、1試合の平均得点が4.1に満たないチーム(9月2日時点)が相手だ。ブレーブスとメッツはゼロ、ダイヤモンドバックスも22試合中2試合しかない。また、カブスが1試合平均5.0得点以上のチームと対戦するのは、3試合だけ。こちらは、ブレーブスはゼロながら、メッツは13試合、ダイヤモンドバックスは10試合を数える。

 ただ、ダルビッシュが好成績のままシーズンを終えても、ほぼ遜色ない成績の投手がいた場合、この点は――ここまでのシーズンも含め――サイ・ヤング賞の選考において、不利な材料となりかねない。例えば、ロサンゼルス・ドジャースを抑えるのとピッツバーグ・パイレーツを抑えるのでは、どちらも6イニングを投げて無失点でも、前者の方が価値は高い、という考え方だ。

 今シーズンは、対戦カードも通常とは異なる。ナ・リーグ中地区のチームは、ナ・リーグ中地区とア・リーグ中地区のチームと試合を行い、それ以外の地区のチームとは当たらない。

 なお、この4人のうち、デグロームは過去2年ともサイ・ヤング賞に選ばれている。他の3人は受賞したことがなく、ダルビッシュが選出されれば、日本人投手のみならず、アジア出身の投手としても初となる。それについては、こちらで書いた。

サイ・ヤング賞投票でランクインした日本人投手たち。最高位はダルビッシュの2位。岩隈は3位、野茂は4位

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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