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オールスターで「1試合2本塁打」にもかかわらず、MVPを受賞できなかった選手たち

宇根夏樹ベースボール・ライター
村上隆行(左)と中田良弘 MARCH 27, 2009(写真:アフロスポーツ)

 オールスター・ゲームで1試合に3本のホームランを打った選手は、1978年のエイドリアン・ギャレット掛布雅之しかいない。4本以上は皆無だ。2人はそれぞれ、第1戦と第3戦に記録。掛布は3打席連続だった。どちらも、試合ごとに選出されるMVP(最優秀選手賞)を受賞した。

 この2人よりも1本少ない、1試合2本塁打は、延べ27人が記録している。彼らのうち、その試合でMVPを受賞したのは16人だ。割合にすると、60%に届かない。27人中16人なので、59.3%だ。

筆者作成
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 もっとも、MVPを受賞できなかった選手のほとんどは、所属するリーグが試合に敗れたか、同じ試合でホームランを2本打った選手が他にもいた。これまでのオールスター・ゲームにおいて、試合に負けながらMVPを受賞した選手は一人もいない。また、複数の選手が同時に受賞したこともない。

 そのなかで、1987年の第3戦に2本のホームランを打った村上隆行だけは例外だ。試合に勝ち、彼以外に2本塁打以上の選手はいなかったにもかかわらず、MVPを受賞できなかった。この試合のMVPには、清原和博が選ばれた。

 4回裏から遊撃の守備についた村上は、2打席ともホームランを打ち、計3打点を挙げた。本塁打のみならず、打点も、この日の誰よりも多かった。一方、「3番・三塁」として先発出場した清原は、1回表に2ラン本塁打を打ち、5打数3安打、2打点を記録した。

 試合は、1回裏と終盤にセ・リーグが追い上げたものの、パ・リーグは清原のホームランで先制し、そこから一度もリードされることなく、9対7で逃げ切った。MVPに関しては、清原が「KK対決」を制した――2年前までPL学園でともにプレーしていた桑田真澄からホームランを打った――ことも、印象を強めたのかもしれない。

 村上のオールスター・ゲーム出場は、この年のみ。最初の2試合は、1度ずつ打席に立った。第1戦は三振を喫したが、第2戦は二塁打を打ち、打点も記録した。清原のオールスター・ゲームMVPは、前年の第2戦に続く2度目。その後も5度、1990年の第2戦、1993年の第1戦、1996年の第2戦、1997年の第2戦、2000年の第3戦に受賞している。

 なお、オールスター・ゲームの本塁打については、別の切り口からこちらでも書いた。

オールスターの1試合で「同じ球団の選手が打ったホームラン」の合計は、昨年の阪神の3本が最多…ではなく

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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