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今年のドラフトで指名された選手が、マイナーリーグを経験せずにメジャーデビュー!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロジャース・センター Jul 12, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 トロント・ブルージェイズのサマーキャンプ(スプリング・トレーニング2.0)には、先月のドラフトで指名されたばかりの選手が参加している。全体5位のオースティン・マーティンがそうだ。

 今月8日、マーティンはブルージェイズに入団した。契約金は700万825ドルだ。その2日後に上限60人のプレーヤー・プールに登録されたマーティンは、7月13日、サマーキャンプが行われているロジャース・センターに姿を見せた。

 マーティンが開幕ロースターの30人に残る可能性は、極めて低い。ブルージェイズとしては、トップ・プロスペクトにプロの雰囲気を経験させる、大学のシーズンが中断した3月以来となるプレーする機会(あるいは他の選手たちと練習する機会)を与える、といった目的に加え、マーティンが実際にプレーするところを監督やコーチが見たいという気持ちもあるのかもしれない。

 ドラフトで指名されて入団し、マイナーリーグを経験せずにメジャーデビューした選手は、これまでに21人しかいない。しかも、21世紀に入ってからは、2009年の全体8位、マイク・リーク(現アリゾナ・ダイヤモンドバックス)だけだ。

 6月上旬のドラフトでシンシナティ・レッズに指名され、8月半ばに入団したリークは、マイナーリーグのレギュラーシーズンが9月上旬に終わることもあって、そのシーズンはプレーせず、翌年の4月11日にメジャーデビューした。ただし、メジャーリーグのマウンドに立つ前に、リークはプロスペクトを集めて行われるアリゾナ・フォール・リーグで投げ、ライジング・スターズ・アウォードを受賞している。ちなみに、リークは、今シーズンの欠場をいち早く表明した。

 マーティンの場合、今シーズンのマイナーリーグは中止なので、メジャーデビューが来シーズンの開幕早々でも、リークに続く22人目となり得る。もっとも、こちらも可能性は皆無に近い。マーティンが来春のスプリング・トレーニングでどれだけ好成績を残しても、ブルージェイズは、昨シーズンのブラディミール・ゲレーロJr.と同じように、開幕から数週間はマイナーリーグにとどめ、それによってサービスタイムの日数を調整し、FAになるのを1年遅らせるだろう。

 ただ、マーティンの契約とほぼ同時に、チャーリー・モントーヨ監督はゲレーロJr.のポジションについて、昨シーズンの三塁ではなく、今シーズンからは一塁をメインにする、と記者会見で発表した。マーティンはバンダービルト大で、遊撃を除く内野3ポジションとセンターを守ってきた。最も多かったのは、三塁手としての出場だ。

 昨シーズン、ブルージェイズでは、ゲレーロJr.だけでなく、キャバン・ビジオボー・ビシェットもメジャーデビューした(それについては「殿堂選手の息子2人に続き、二冠王の息子も同球団からメジャーデビュー」で書いた)。マーティンが彼らとともにラインナップを形成する日は、そう遠くなさそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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