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3年連続サイ・ヤング賞となるのか。リーチをかけた過去の投手たちは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)Aug 11, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)は、過去2年ともサイ・ヤング賞を手にしている。2年連続の受賞は、延べ12人目だ。ロジャー・クレメンスが2度記録している。

 これまでの11人中、グレッグ・マダックスランディ・ジョンソンの2人は、そこからストリークを伸ばした。どちらも3年連続にとどまらず、4年続けて受賞した。それぞれ、1992~95年と1999~2002年だ。この間、ランディはアリゾナ・ダイヤモンドバックスで投げ続けたが、マダックスは1992年のオフにシカゴ・カブスからFAとなり、アトランタ・ブレーブスと5年2800万ドルの契約を交わした。

 一方、3年連続とならなかった9人のうち、サンディ・コーファックスはリーチがかかったシーズンに投げていない。故障で全休したのではない。腕に痛みを抱えながら投げていたコーファックスは、1966年11月に引退を発表した。当時、まだ30歳の若さだった。

 1970年のデニー・マクレインと2001年のペドロ・マルティネスは、故障による長期欠場を余儀なくされた。1997~98年にトロント・ブルージェイズで投げたクレメンスは、デビッド・ウェルズら3選手と交換にニューヨーク・ヤンキースへ移り、不本意な移籍1年目を過ごした。

筆者作成
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 他の5人は、連続受賞こそ2年で途切れたものの、いずれもサイ・ヤング賞の選考投票でポイントを得た。なかでも、1977年のジム・パーマーと2018年のマックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)は2位、2015年のクレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)は3位に位置した。

 1977年にパーマーの受賞を阻んだのは、ヤンキースのリリーバー、スパーキー・ライルだ。この年、ナ・リーグではスティーブ・カールトントミー・ジョンに50ポイント差をつけたのに対し、ライルとパーマーの差はわずか8ポイント。3位のノーラン・ライアンと4位のデニス・レナードを含め、56~45ポイントに4人がひしめいた。それまで、ア・リーグのサイ・ヤング賞にリリーバーが選ばれたことはなく、ナ・リーグでも1974年のマイク・マーシャルしかいなかった。

 2018年のシャーザーと2015年のカーショウは、どちらも300三振以上を奪ったが、サイ・ヤング賞は防御率1点台の投手にさらわれた。2018年はデグローム(1.70)、2015年はジェイク・アリエタ(1.77)が受賞。アリエタとカーショウの間、2位のザック・グレインキーも防御率は1.66。カーショウのみならず、アリエタよりも低かった。ちなみに、当時のアリエタはカブスにいたが、現在はフィラデルフィア・フィリーズに在籍している。また、カーショウとチームメイトだったグレインキーは、ダイヤモンバックスを経て、ヒューストン・アストロズにいる。

 デグロームが3年続けてサイ・ヤング賞を受賞できるかどうかは、約2ヵ月の短縮シーズンだけに、通常以上に予測が難しい。イニングなどは差がつきにくい上、ダークホースですらない予想外の投手が、最初から最後まで快投を続けるかもしれない。

 2018年のデグロームは、前半戦も後半戦も防御率1点台(1.68と1.73)を記録したが、2019年は3.27と1.44だった。チームが60試合を終えた時点の防御率は、2018年が1.57(13登板)、2019年は3.49(12登板)。防御率ですべてが決まるわけではないが、昨シーズンと同じような出足であれば、連続受賞は途切れることになるだろう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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