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10年前のMLBドラフト。WARトップは全体1位指名のハーパーではなく。日本プロ野球にも10人以上が

宇根夏樹ベースボール・ライター
デービッド・ブキャナン AUG 11, 2014(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグのドラフトは、6月上旬に行われる。今から10年前、2010年のドラフトでは、その前年に両リーグ最多の103敗を喫したワシントン・ナショナルズが、全体1位でブライス・ハーパー(現フィラデルフィア・フィリーズ)が指名した。

 その評価を、ハーパーは裏切ってはいない。2012年の新人王に続き、2015年はMVPを受賞。オールスター・ゲームには6度(2012~13、15~18年)選ばれた。総合指標のWARも、ベースボール・リファレンス版(bWARもしくはrWAR)とファングラフス版(fWAR)のいずれにおいても、通算30.0を超える。昨年3月には、13年3億3000万ドルの契約を手にした。

 けれども、ハーパーのここまでの通算WARは、2010年のドラフトで指名され、プロ入りした選手のトップではない。bWARもfWARも、全体13位のクリス・セール(現ボストン・レッドソックス)がダントツだ。オールスター・ゲーム選出も、ハーパーの6度に対し、セールは7度(2012~18年)を数える。ハーパーは6度中5度(2度目以降)がファン投票による選出だが、セールは投手なので、そもそもファン投票はない。

筆者作成
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 セールは、3月にトミー・ジョン手術を受け、復帰は早くても来シーズンとなる。ただ、それまでに、ハーパーをはじめとする「ドラフト同期」がセールの通算WARを上回ることはないだろう。シーズンが短縮されれば、WARの数値も低くなる。ちなみに、昨シーズンの両リーグ・トップは、bWARがコディ・ベリンジャー(ロサンゼルス・ドジャース)の9.1、fWARはマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)の8.6だった。

 また、ハーパーと同じく、9巡目・全体272位のジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)も新人王に選ばれているが、受賞したのはハーパーの2年後だ。2人のシーズン平均WARを比べると、4.0前後のハーパーに対し、デグロームはbWARもfWARも5.5を上回る。

 なお、上のリストは、2010年のドラフトで入団した選手の通算bWARトップ20だ。投手のfWARは、投手としての数値と野手としての数値の合計が見当たらなかったので、それぞれを合算した。セールの場合、44.5と-0.1、合計は44.4となる。

 一方、メジャーリーグやマイナーリーグを去り、日本や韓国、台湾などでプレーする選手も少なくない。昨シーズンと今シーズン(現時点)に限っても、9人の選手が日本プロ野球の球団に在籍している(下のリスト)。さらに遡って調べれば、他にもいるかもしれない。少なくとも、2人はそうだ。3巡目(補完)・全体115位のドン・ローチは、2018年にオリックス・バファローズで11試合に登板した。32巡目・全体969位のジェイソン・ロジャースは、2017年に阪神タイガースで5本塁打を記録した。

筆者作成
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 4月に「台湾でプレーしている元メジャーリーガーのなかには、日本プロ野球と韓国プロ野球も経験した選手がいる」で書いたとおり、現在、ローチは統一セブンイレブン・ライオンズに在籍している。また、7巡目・全体231位のデービッド・ブキャナンは、昨オフに東京ヤクルトスワローズを退団後、韓国のサムスン・ライオンズに入団した。彼らはいずれも、すでに今シーズンの開幕を迎えている。

 今年のドラフトは、6月10~11日に行われる。各球団の指名順位については、5月に「ヤンキースのドラフト指名権は3つ、ジャイアンツとカーディナルスは7つ」で書いた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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