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地区最下位のチームがワールドシリーズで優勝!? 新フォーマットのポストシーズンなら可能性あり

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)Oct 30, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現在、ポストシーズンの新フォーマットが検討されている。実現すれば、1リーグにつき5チーム(地区優勝3チーム、ワイルドカード2チーム)のポストシーズン進出が、7チーム(地区優勝3チーム、ワイルドカード4チーム)に増える。そのシリーズについては「30チーム中14チームがポストシーズン進出!? フォーマット変更案が浮上中」で書いた。

 新フォーマットでは、勝率.500未満のポストシーズン進出チームが出てくる可能性が高まる。例えば、2017年のア・リーグでは、3チームが80勝82敗(勝率.494)で、ワイルドカード・レースの3位に並んだ。新フォーマットに当てはめると、この3チームのうち2チーム(ワイルドカード3位と4位)はポストシーズンへ進む。

 タイ・ブレイク・ゲームを行っても、レギュラーシーズンの勝率は.500に届かない。まず、2チームが対戦し、勝った方のポストシーズン進出が決まる。このチームはプラス1勝なので、81勝82敗(.497)だ。続いて、負けたチームは残る1チームと対戦。そこで勝ったチームが、最後の切符を手にする。前者なら1敗と1勝が加わって81勝83敗(.494)、後者であればプラス1勝の81勝82敗(.497)なので、どちらであっても勝率.500未満に変わりはない。

 また、同地区の5チームすべてが、揃ってポストシーズンへ進むこともあり得る。ワイルドカードの4チームが、同じ地区の2位から5位というケースだ。そうなると、地区最下位(5位)であっても、ポストシーズンで勝ち進めば、ワールドチャンピオンになれる。

 1リーグ2地区から3地区へ移行した1994年以降、ワイルドカード・レースの1~4位を同地区のチームが占めたことはない(2011年まではワイルドカード・レースの1位がポストシーズン進出。2012年以降は1位と2位)。ただ、可能性はゼロではない。

 2005年のナ・リーグは、中地区のヒューストン・アストロズが89勝73敗(.549)でワイルドカード・レースを制し、ポストシーズンへ進んだ。アストロズの勝敗のうち、東地区の2チームとの対戦、対フィラデルフィア・フィリーズの6勝0敗と対ワシントン・ナショナルズの5勝2敗をどちらも裏返し、0勝6敗と2勝5敗にすると、アストロズは80勝82敗(.494)、フィリーズは88勝74敗(.543)から94勝68敗(.580)、ナショナルズは81勝81敗(.500)から84勝78敗(.519)になる。他のチームの勝敗はそのままとすると、ワイルドカード・レースの上位4チームは、アトランタ・ブレーブス(90勝72敗/.556)、ナショナルズ、フロリダ・マーリンズ(83勝79敗/.512)、ニューヨーク・メッツ(83勝79敗/.512)。すべて東地区のチームだ。フィリーズは地区優勝、アストロズはワイルドカード・レースの6位に下がる。こうした計算が成り立つのは――もう少し複雑になるが――2005年のナ・リーグだけではない。

筆者作成
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 ちなみに、地区3位でワイルドカードの2枠目をゲットし、そこからワールドシリーズまで進んだチームはない。2013年のシンシナティ・レッズ(ナ中地区)と2017年のコロラド・ロッキーズ(ナ西地区)はワイルドカード・ゲームで敗れ、2015年のシカゴ・カブス(ナ中地区)はリーグ・チャンピオンシップ・シリーズで敗退した。2016年のア・リーグでワイルドカードを得た東地区の2チーム、トロント・ブルージェイズとボルティモア・オリオールズの地区順位は2位タイ。ブルージェイズはワイルドカード・ゲームでオリオールズを下し、ディビジョン・シリーズでもテキサス・レンジャーズを破ったが、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズでクリーブランド・インディアンズに敗れた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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