Yahoo!ニュース

菊池涼介はメジャーリーグへ行かず、広島東洋に残留する可能性も!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
菊池涼介/2017年のWBC MARCH 15, 2017(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 順調にいけば、菊池涼介は広島東洋カープを退団し、来シーズンはメジャーリーグでプレーしているだろう。ただ、必ずしもそうなるとは限らない。

 菊池は出塁率が低く、そうパワーがあるわけでもない。ここ3シーズン(2017~19年)の出塁率は.308、本塁打は計40本(年平均13.3本)だ。

 この3シーズンに、メジャーリーグで1500打席以上に立った104人中、出塁率.308以下は12人(11.5%)、40本塁打以下は15人(14.4%)。どちらにも該当するのは、ビリー・ハミルトン(.297/8本)とホゼ・ペラーザ(.306/25本)の2人(1.9%)しかいない。

 ハミルトンは、スピードスターの外野手だ。シンシナティ・レッズ時代の2014~17年には、4年続けて55盗塁以上を記録した(タイトルはなし)。けれども、カンザスシティ・ロイヤルズへ移った今シーズンは、8月半ばにロースターから外され、ウェーバー経由で移籍したアトランタ・ブレーブスでは控えに。シーズン終了後、オプションだった来シーズンの契約を破棄された。ペラーザは、現在もレッズに在籍。昨シーズンは正遊撃手を務めたが、今シーズンは内外野を守るユーティリティに戻った。今オフ、レッズから契約を解除されてもおかしくない。

 これまでにメジャーリーグでプレーした日本人野手の例からすると、菊池の打撃成績が日本プロ野球時代より向上するとは考えにくい。守備がいくら優れていても、レギュラーとして菊池を迎え入れようとする球団は、メジャーリーグにはないだろう。

 守備に関しても、天然芝のマツダスタジアムをホームとしてきたことはプラスながら、二塁以外を守らなくなって久しい点はマイナスだ。メジャーリーグでは、天然芝の球場が大半を占める。一方、他のポジション、なかでも遊撃を守れないとなると、内野のユーティリティとしての価値は下がる。過去に経験があるので大丈夫かもしれないが、現時点では未知数ということだ。

 もしかすると、マイナーリーグ契約しか提示されない可能性もある。そうであっても、菊池は入団するのだろうか。

 もっとも、マイナーリーグ契約でも、ノン・ロースター・インバイティ(キャンプ招待選手)として、メジャーリーグのスプリング・トレーニングには参加できるはずだ。それすらない契約しか得られないようであれば、代理人の選択を間違ったと言わざるを得ない。

 ちなみに、メジャーリーグでプレーした日本人野手のうち、中村紀洋川崎宗則田中賢介の3人と、二刀流の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、マイナーリーグ契約からスタートした。大谷の場合は、25歳以下であったことからそうなった。4人のうち、川崎と大谷はメジャーリーグの開幕ロースターに入り、中村は開幕直後、田中は7月にAAAから昇格した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事