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75歳の新コーチが、3億3000万ドルの男を目覚めさせた!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)Aug 15, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)が、当たっている。8月14日からの7試合で、ホームランを5本打ち、打率.360(25打数9安打)と12打点を記録した。

 打撃コーチの交代が合図となったかのように、ハーパーは打ち始めた。8月13日、フィリーズは打撃コーチのジョン・メリーを解任し、シニア・アドバイザーを務めていたチャーリー・マニエルを後任に据えた。75歳にして、6年ぶりにユニフォームに袖を通すことになったマニエルは、翌日からダグアウトに入った。その初日、ハーパーは2本のホームランを打ち、2日目は逆転サヨナラ・グランドスラムを叩き込んだ。

 8月13日まで、ハーパーは118試合に出場し、打率.248、22本塁打、80打点だった。普通の選手であれば、OPS.837は低い数値ではないが、今年3月、ハーパーは13年3億3300万ドルでフィリーズに入団した。2017年のOPS1.008と2018年の.889に対し、今シーズンの月間OPSは、最初の4ヵ月とも.880を下回った。

 8月14日に2本目のホームランを打った直後、ハーパーは、ダグアウトに座っているマニエルのところへ行き、拳を軽くぶつけ合ってから、49歳上のコーチを労わるかのごとく、水の入った紙コップを手渡した。ちなみに、その4日後、ハーパーは脱水症状を起こし、試合の途中で退いている。また、8月15日のサヨナラ・グランドスラム後には、ダグアウトの前で出迎えたマニエルに抱きついた。

 PhillyVoice.comのポール・ヘイゲンは、8月19日に「ブライス・ハーパーとチャーリー・マニエルの間には陰謀があったのか?」と題した記事を発表した。打撃コーチの交代には、ハーパーの意向が働いていたのかもしれない、という内容だ。真偽はともかく、ワイルドカードを狙うフィリーズにとって、ハーパーの打棒は欠かせない。8月14~15日だけでなく、8月16日の3ラン本塁打は勝利を決定づけ、8月21日の2ラン本塁打は逆転の一打となった。

 フィリーズは、ワイルドカードの2番手まで1.5ゲーム差に位置する。まだ予断は許さないが、「3億3000万ドル」+「75歳」=「8年ぶりのポストシーズン進出」となるのだろうか。数日前に「黄金時代のエースと監督が、栄光の地へ戻ってきた。ただし、それぞれの立場は異なり…」でも書いたとおり、8年前にフィリーズがポストシーズンへ進んだ時、采配を振っていたのはマニエルだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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