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メジャーリーグ7年目の投手が、初打席でヒットを打つ。これまで打席に立たなかったのがもったいない!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウィル・スミス(中央)/左はエバン・ロンゴリア Aug 11, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月11日、メジャーリーグ7年目のウィル・スミス(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が、キャリアで初めて打席に立ち、ヒットを打った。2者を生還させ、2打点も挙げた。

 スミスは、左投げの投手だ。打者としては、右打席に入った。メジャーデビューから17試合は先発として投げたが、当時はア・リーグのカンザスシティ・ロイヤルズにいて、17登板ともインターリーグではなかった。その後はリリーフに転向し、昨シーズンの途中からクローザーを務めている。

 1点リードの8回表、トニー・ワトソンが1死二、三塁とされたところで、スミスはマウンドを引き継いだ。最初の打者に犠牲フライを打たれ、スミスにはセーブ失敗がついたものの、被安打はなく、同点でイニングを終えた。その裏、ジャイアンツは1点を挙げ、2死一、三塁の場面でスミスに打順が回ってきた。

 ブルース・ボウチー監督は代打を送らず、スミスを打席に向かわせた。スミスの前にリリーフ投手が6人投げていたことも、続投の理由となったようだが、1点リードではなく同点であれば、代打を起用していたのではないだろうか。

 一塁走者が二盗を決めた後、スミスは速球をライト前へ弾き返した。次打者の二塁打で三塁まで走った後、9回表を無失点に抑え、白星を手にした。

 通算打率1.000のまま、スミスはキャリアを終えるかもしれない(まだ先のことではあるが)。そういった選手は少なくなく、例えば、2007年に阪神タイガースで21試合に登板したエステバン・ジャン(ヤン)は、その前にメジャーリーグで3打席に立ち、ホームラン、犠牲バント、シングル・ヒットを記録した。ちなみに、阪神では打率.143(28打数4安打)。長打は二塁打1本だった。

 なお、この試合では、ジャイアンツの2番手と4番手として投げた、ヤーンデル・グスターベイ(3年目)とトレバー・ガット(5年目)も、キャリアで初めて打席に立った。けれども、スミスと違い、ヒットを打つことはできなかった。グスターベイは三振を喫し、ガットはライト・ライナーに終わった。2人とも、通算打率1.000の可能性はなくなった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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