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これほど多くのスカウトから熱い視線を浴びた選手はいなかった!? その人数は何と…

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンソニー・サンタンダー(ボルティモア・オリオールズ)Jul 6, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 これほど多くのスカウトから、一斉に熱い視線を浴びた選手は、今までいなかったかもしれない。たとえ、それが選手を視察するスカウトではなくても。

 そう、8月4日の試合で、カムデンヤーズのレフトの外野席に陣取り、目の前を守っているアンソニー・サンタンダー(ボルティモア・オリオールズ)に声援を送ったのは、ボーイ・スカウトやガール・スカウトたちだ。その人数は約4000人(レフトの外野席だけではなかったようだ)。この日の観客は1万8837人だったので、彼らが全体の5分の1以上を占めていたことになる。

 フライをサンタンダーが捕るたびに、それがどんなに平凡な一打であっても、大きな喝采が起きた。サンタンダーがボールをスタンドに投げ入れると、さらに盛り上がった。一方、サンタンダーが打ったフライを、センターで捕球したテオスカー・ヘルナンデス(トロント・ブルージェイズ)は、ブーイングを浴びた。

 このスカウトたちが、ベースボールのルールを完全に理解していたかどうかは、わからない。彼らは、イギリスからやってきた。7月22日~8月2日にウエスト・バージニア州で開催された「第24回ワールド・スカウト・ジャンボリー」に参加した後、カムデンヤーズを訪れた。もっとも、存分に楽しんだことは間違いなさそうだ。試合途中にサンタンダーのレプリカ・ジャージを購入し、それを着て応援するスカウトもいた。オリオールズも気を利かせ、スコアボードで彼らを「オフィシャル・インターナショナル・アンソニー・サンタンダー・ファン・クラブ」と紹介した。

 サンタンダーは、メジャーリーグ3年目の24歳だ。2016年のオフに、ルール5ドラフトでオリオールズに指名され、クリーブランド・インディアンズから移籍した。昨シーズンまでは、メジャーリーグで46試合に出場しただけ。今シーズンは、この日が50試合目。AAAでも、48試合に出場している。レプリカ・ジャージが売っていなくても、少しもおかしくない。ちなみに、サンタンダーの出身地は、イギリスではなくベネズエラだ。

 ツイッターに、サンタンダーはこう綴った。インタビューには通訳を介して答えているが、こちらは英語で書いてある。「今日の試合に来てくれたボーイズ&ガールズ・スカウトたちに御礼を言いたい。あの交流は信じられないような経験だったし、決して忘れることはないだろう。また会いたいな。無事に旅を終えて帰宅することを祈ります。君たちは最高! Go O's!」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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