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スチュワートと契約できなかった球団が得たもの。福岡ソフトバンクから、ではないけれど

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブレーブスの選手たちとファン/ホーム開幕戦 Apr 1, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年のドラフトにおいて、アトランタ・ブレーブスは全体8位でカーター・スチュワートを指名した。先日、スチュワートは福岡ソフトバンクホークスに入団した。

 スチュワートと契約できなかったブレーブスは、その補償として、今年のドラフトで全体9位の指名権を与えられた。これは、スチュワートが福岡ソフトバンクと契約したからではない。それよりも前に確定していたことだ。

 4巡目より前に指名した選手と、交渉期限までに契約できなかった球団には、翌年のドラフト指名権が与えられる。3巡目より前の場合は、一つ後ろの順位だ。これには、各順位に設定されたスロット・バリューの40%以上に当たる契約金を、球団が選手に申し出ていることが条件となる。スロット・バリューについては、先日、「福岡ソフトバンクに入団するスチュワートの「計画」。ドラフト全体8位→進学→日本球界ときて、そこから…」で簡単に説明した。

 全体8位(昨年)のスロット・バリューは498万700ドルだったので、ブレーブスは少なくとも199万2280ドル以上の契約金をスチュワートに提示し、交渉決裂によって、全体9位(今年)の指名権を得た。ブレーブスはそれを使って、ベイラー大の捕手、シェイ・ラングリアーズを指名した。

 ラングリアーズは、大学3年間の157試合で打率.289と出塁率.370、31本塁打と41二塁打を記録し、2018年はABCA/ローリングス・ゴールドグラブ(NCAAディビジョン1)を受賞した。MLBネットワークのジム・キャリスは、ラングリアーズについて「打撃のツールも備えたオースティン・ヘッジス(サンディエゴ・パドレス)」と評していた。

 ラングリアーズの指名順位は、捕手では、ボルティモア・オリオールズが全体1位で指名したアドリー・ラッチマン(オレゴン州立大)に次ぐ。2人を除くと、1巡目指名の捕手は、ヒューストン・アストロズから全体32位指名を受けたコリー・リー(カリフォルニア大バークリー校)しかいない。ブレーブスが1巡目に持っていた「通常」の指名権は、全体21位だ。全体9位の「インサート」がなければ全体20位だったが、どちらにせよ、ラングリアーズを指名することはできなかっただろう。それまでに、他球団が指名していたに違いない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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