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福岡ソフトバンクに入団するスチュワートの「計画」。ドラフト全体8位→進学→日本球界ときて、そこから…

宇根夏樹ベースボール・ライター
(写真:アフロ)

 5月25日、福岡ソフトバンクホークスが、カーター・スチュワートとの契約合意を発表した。ESPNのジェフ・パッサンは、その数日前に、6年契約で総額は700万ドル以上と報じている。

 スチュワートは19歳の右投手だ。昨年のドラフトで、アトランタ・ブレーブスから全体8位指名を受けた。この順位は、高校生の投手では、サンディエゴ・パドレスが全体7位で指名したライアン・ウェザーズに次ぐ。ちなみに、ウェザーズの父は、メジャーリーグで964試合に登板したデビッド・ウェザーズだ。

 ドラフト10巡目までの指名順位には、それぞれ、契約金のスロット・バリューが定められている。球団は必ずしもそれに従う必要はないが、入団させた選手たちに支払う契約金の合計額が、各選手の指名順位におけるスロット・バリューを合算した額(ボーナス・プール)を超えると、ペナルティを科される。

 昨年の場合、全体7位のスロット・バリューは522万6500ドル、8位は498万700ドルだった。ウェザーズはスロット・バリューどおりの契約金を得て、パドレスに入団した。一方、スチュワートはブレーブスから半額以下の約200万ドルしか提示されなかった。右手首の故障歴が問題視されたようだ。スチュワートはジュニア・カレッジへ進学した。

 ジュニア・カレッジであれば、今年のドラフトの対象となる。ところが、6月のドラフトを待たず、スチュワートは日本行きを決めた。

 スチュワートの指名順位は、前年より下がると予想されていた。ベースボール・アメリカは、トップ500の38位に挙げている。そうなると、契約金は、前年にブレーブスから提示された額を下回る可能性がある。今年の場合、400万ドル以上のスロット・バリューは全体14位まで。37位以降は200万ドル未満だ。予想外の高順位で指名されない限り、入団からの6年間(2019~24年)に得る金額は、とうてい700万ドルに届かない。

 また、福岡ソフトバンクとの契約が2024年の秋に終わると、スチュワートはFAになる。それまでに日本で実績を残していれば、メジャーリーグの球団から複数年の契約を申し出られるはずだ。例えば、2015~17年に読売ジャイアンツで投げたマイルズ・マイコラスは、セントルイス・カーディナルスから2年1550万ドルの契約を得た。菊池雄星がシアトル・マリナーズと交わした契約は、確定している分だけでも4年5600万ドルだ。契約時のマイコラスは29歳、菊池は27歳だった。スチュワートは2024年11月に25歳を迎える。

 この年齢は、昨オフにFA市場に出た時のブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)とマニー・マチャド(パドレス)より1歳下だ。この2人でさえかなり若く、ほとんどの選手は30歳前後でFAになる。

 25歳のメジャーデビューも、決して遅くはない。過去2年のサイ・ヤング投手4人のうち、コリー・クルーバー(クリーブランド・インディアンズ)とジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)は25歳でデビューした。

 なお、スチュワートの速球は最速97マイルに達し、カーブは3000回転/分を超える。先日、「スピンの効いたカーブがもたらした、史上最長の「39登板無失点」」で書いたとおり、これはエリートクラスのスピンだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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