スピンの効いたカーブがもたらした、史上最長の「39登板無失点」
5月17日、8回裏からマウンドに上がったライアン・プレスリー(ヒューストン・アストロズ)は、対戦した3人の打者を、見逃し三振、レフトフライ、投手ゴロに仕留め、2点のリードを保ったまま、クローザーのロベルト・オスーナにつないだ。
昨年8月15日以降、プレスリーの失点はゼロ。昨シーズンの21登板と今シーズンの18登板を合わせ、ストリークを39登板(38.0イニング)とし、2011年にクレイグ・キンブレルが作った38登板連続(37.2イニング)のメジャーリーグ記録を塗り替えた。
ストリーク中、キンブレルは誰にもホームを踏ませなかったが、プレスリーは4人の走者にホームインされた。もっとも、これは役割の違いが大きい。登板時に背負っていた走者は、クローザーのキンブレルが計3人、セットアッパーのプレスリーは計11人。三塁走者に限れば、0人と4人だ。どちらも、イニングの途中では降板していない。
プレスリーの快投は、昨年7月にミネソタ・ツインズから移った直後に始まった。昨シーズンの防御率は、移籍前の51登板(47.2イニング)が3.40、移籍後の26登板(23.1イニング)は0.77だ。
その理由は、カーブにある。スタットキャストによると、昨年4月から7月まで、投球全体にカーブが占める割合は毎月30%未満だったが、8月以降は35%を超え、今シーズンに入ってからも35%前後を推移している。
プレスリーのカーブは、スピンが効いている。2017年の平均3104回転/分は50球以上の2位。アストロズがこの点に目をつけ、プレスリーを手に入れたことは、想像に難くない。ここ2シーズンはよりスピンをかけ、昨シーズンは3231回転/分(2位)、今シーズンは3283回転/分(1位)としている。
例えば、昨年1月にアストロズが獲得したゲリット・コールは、昨シーズン、カーブの割合を前年の12.1%から19.2%に増やし、再ブレイクを果たした。2017年に2667回転/分だったカーブは、昨シーズンが2842回転/分、今シーズンは2918回転/分だ。
彼らほどでなくても、アストロズにはスピンの効いたカーブを持ち球とする投手が少なくない。今シーズン、平均2750回転/分以上のカーブ(70球以上)を投げている投手は、メジャーリーグ全体に25人いる。そのうち、約4分の1の6人はアストロズの投手だ。プレスリーとコールの他、フランバー・バルデス(2882回転/分)、コリン・マクヒュー(2796回転/分)、ウィル・ハリス(2795回転/分)、ジャスティン・バーランダー(2792回転/分)がそう。ちなみに、2番目に多いボストン・レッドソックスでさえ、その人数はアストロズの半分に過ぎない。
また、アストロズでは、昨年11月にトミー・ジョン手術を受けたランス・マッカラーズJr.も、スピンの効いたカーブを多投する。昨シーズンは2790回転/分を記録した。2年前にワールドシリーズ進出を決めた試合で、マッカラーズJr.は24球続けてカーブを投げた。
さらに言えば、現在はタンパベイ・レイズにいるチャーリー・モートンも、過去2シーズンはアストロズで投げていた。こちらは、2900回転/分前後のカーブを決め球とする。2年1400万ドルでアストロズと契約したモートンは、そこでキャリアを立て直し、2年3000万ドルでレイズに迎えられた。