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同じチームの投手がなぜ? 一方の防御率はホームが2点台でアウェーは6点台、もう一方は5点台と2点台

宇根夏樹ベースボール・ライター
チェイス・アンダーソン(ミルウォーキー・ブルワーズ)Jul 4, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2018年に140イニング以上を投げた88投手のうち、10人はホームとアウェーの防御率が2点以上違った。6人はアウェーの防御率が高く、4人はホームの防御率が高かった。

筆者作成
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 なかでも対照的なのは、ミルウォーキー・ブルワーズの2人、ジュニア・ゲラチェイス・アンダーソンだ。シーズン防御率は同水準の4.09と3.93ながら、ホームとアウェーの防御率はまったく違う。ゲラはホームが2.48でアウェーは6.97。アンダーソンはそれぞれ5.03と2.74だった。

 彼らがホームとするミラー・パークのパーク・ファクターは、ラン(得点/失点)が1.011。数値はフラットの1.000に近く、順位も30球場の上から15番目に位置する。これは、打者有利と投手有利のいずれでもなかったことを示す。ただし、ホームランのパーク・ファクターは、上から10番目の1.116と高め。アンダーソンの場合、ホームの防御率がアウェーに比べて著しく悪かったのは、これが大きな要因のようだ。

 ファングラフスのデータによると、アンダーソンのフライ率は44.2%で、88人中9番目に高かった(ゲラは30番目の36.7%)。そして、ナ・リーグ最多タイの被本塁打30本のうち、22本をホームのミラー・パークで打たれた。イニングはアウェー(75.2)よりもホーム(82.1)の方が多いが、その点を考慮しても、差は歴然としている。

 また、2017年はホームでもアウェーでも防御率2点台(2.51と2.95)ながら、被本塁打に関しては、2018年と同じようにホームが多かった。アウェーで打たれたホームランは5本だが、ホームでは9本を数えた。フライ率は2017年も40%以上。イニングはホームの方が少なかった。

 フライボーラーのアンダーソンは、ミラー・パークに向いていないのかもしれない。ちなみに、ここ2シーズンの合計で見る限り、ミラー・パークの屋根を開けていても閉めていても、アンダーソンがホームランを打たれる割合は変わらない。

 一方、ゲラの防御率がホームとアウェーで極端に違う理由は判然としないが、2017年も同じ傾向を示している。ホームの防御率は3.79、アウェーは6.68。その差は3点近かった。

 2015年に30歳でメジャーデビューするまでに、ゲラは独立リーグでも投げた。開花したのは、シカゴ・ホワイトソックスからブルワーズへ移った2016年だ。理由はともかく、ゲラにとってミラー・パークは、まさに「ホーム・スウィート・ホーム」と言っていい。

 ミネソタ・ツインズとニューヨーク・ヤンキースで投げたランス・リンは、移籍前がホーム(ターゲット・フィールド)で防御率2.83、アウェーは7.08、移籍後はホーム(ヤンキー・スタジアム)で4.68、アウェーは3.32だった。移籍前のアウェーには、ヤンキー・スタジアムで投げた4月25日の試合を含む。この日、リンは3.2イニングで6点を失った。

 なお、ホームとアウェーのいずれも防御率1点台は、1.54と1.87のジェイコム・デグローム(ニューヨーク・メッツ)だけ。クリス・セール(ボストン・レッドソックス)は、ホームでもアウェーでも防御率2.11を記録した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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