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1億ドルのクローザーが誕生するのか。現在の最高額は、チャップマンの5年8600万ドル

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイグ・キンブレル(打者はエバン・ギャティス)Oct 14, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 クレイグ・キンブレルは、ボストン・レッドソックスが申し出た1年1790万ドルのクオリファイング・オファーを断った。ESPNのバスター・オルニーによると、キンブレルは6年契約を求めているという。

 リリーフ投手の契約総額トップ3は、いずれも2016年のオフに交わされた。まず、マーク・マランソンがサンフランシスコ・ジャイアンツから4年6200万ドルの契約を得て、ジョナサン・パペルボンの4年5000万ドル(2012~15年)を上回った。それを、アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)が5年8600万ドルで更新。続いて、ケンリー・ジャンセン(ロサンゼルス・ドジャース)が、チャップマンとマランソンの間に位置する、5年8000万ドルの契約を手にした。

筆者作成
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 3人は年平均額もトップ3だったが、昨オフ、ウェイド・デービスが3年5200万ドルでコロラド・ロッキーズに入団し、彼らを追い抜いた。こちらは、デービス(1733万ドル)、チャップマン(1720万ドル)、ジャンセン(1600万ドル)がトップ3だ。

 ここ8シーズンとも、キンブレルは30セーブ以上を挙げている。このストリークは、トレバー・ホフマン(1995~2002年)と並び、マリアーノ・リベラの9シーズン連続(2003~11年)に次ぐ。リベラとホフマンは、通算セーブのトップ2だ。キンブレルの奪三振率は、どのシーズンも13.10以上。セーブ成功率は、新人王を受賞した2011年こそ85.2%ながら、翌年以降は89.0%を割ったことがない。

 こうしたことを踏まえると、契約総額と年平均額のいずれも、リリーフ投手の最高額を塗り替えてもおかしくない。デービスとチャップマンの年平均1700万ドル以上に届かなくても、年平均1670万ドルの6年契約なら、総額は1億20万ドルだ。1億ドルのリリーフ投手が誕生する。

 ただ、リリーフ投手の契約には「5年の壁」が存在する。年平均750万ドル以上で、5年を超える長期契約を得たリリーフ投手は、一人も存在しない。しかも、キンブレルは30歳。チャップマンとジャンセンの2人は、5年契約を交わした時、28歳と29歳だった。今年のポストシーズンで、キンブレルは6セーブを挙げ、失敗は一度もなかったが、9登板中5試合で得点を許した。それだけならまだしも、前半戦の防御率1.77に対し、後半戦は4.57。衰えの始まりではないかと、懸念する球団もあるかもしれない。

 また、キンブレルはクオリファイング・オファーを申し出られたので、契約した球団はドラフト指名権などを失う。チャップマンは2016年の夏にヤンキースからシカゴ・カブスへトレードされ、対象から外れていた。ジャンセンはドジャースからのクオリファイング・オファーを断ったものの、ドジャースへ戻り、こちらも契約した球団がドラフト指名権を失うことはなかった。キンブレルも、レッドソックスが再契約すればそうなるが、4年6800万ドルでネイサン・イオバルディを呼び戻したのに続き、さらにキンブレルにも大枚を投じる可能性は低い。

 キンブレルの契約は、5年8500万ドル(年平均1700万ドル)あるいは4年7000万ドル(年平均1750万ドル)あたりに落ち着くのではないだろうか。前者であればチャップマンの総額とほぼ変わらず、後者ならデービスの年平均額を凌ぐ。

 なお、候補に挙がっている球団の一つ、アトランタ・ブレーブスは、プロ4年目までキンブレルが在籍し、彼自身の地元も近い。だが、6年契約を望んでいることからすると、キンブレルが相場を下回る契約を受け入れる、「ホームタウン・ディスカウント」は考えにくい。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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