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ルール5ドラフトで指名された投手が、ローテーションに定着。このブレイクは本物!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブラッド・ケラー(カンザスシティ・ロイヤルズ)Sep 5, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年12月のルール5ドラフト(メジャーリーグ・フェイズ)で指名された18人のうち、最も活躍したのはブラッド・ケラー(カンザスシティ・ロイヤルズ)だろう。アリゾナ・ダイヤモンドバックスからシンシナティ・レッズへ移り、直後にロイヤルズへトレードされたケラーは、開幕戦でメジャーデビューし、救援21登板で防御率2.01を記録。5月末からは先発へ回って、最後までローテーションから外れることなく投げた。こちらは、20先発で防御率3.28。シーズン全体の防御率3.08は、100イニング以上のルーキー13人のなかで3番目に低かった。また、ルーキーかそうでないかを問わず、ロイヤルズで30イニング以上を投げた16人のベストだった。

筆者作成
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 昨シーズン、ケラーはダイヤモンドバックス傘下のAAで26試合に先発した。防御率は4.68に過ぎなかった。ドラフト指名も、2013年の8巡目・全体240位と高くない。とはいえ、ルール5ドラフトの時点では22歳。他球団に獲得されるのを回避するため、40人ロースターに入れてプロテクトしなかったのは、もったいない気もする。ダイヤモンドバックスが昨オフのルール5ドラフトで失ったのはケラーだけでなく、ビクター・レイエスもデトロイト・タイガースに指名された。一方で、サンフランシスコ・ジャイアンツからアルバート・スアレスを獲得していることからわかるとおり、40人ロースターには空きがあった。スアレスは、福岡ソフトバンクホークスにいるロベルト・スアレスの兄だ。

 ケラーが今後も活躍できるかは、まだわからない。懸念材料としては、奪三振の少なさが挙げられる。奪三振率6.16は、100イニング以上の140人中、下から10番目。与四球率は3.21(91位)で、K/BBは2.00を下回る。それとは反対に、ゴロ率の高さは明るい材料だ。ファングラフスのデータでは、ゴロ率54.4%を記録していて、これは100イニング以上の上から5番目に位置する。打者を圧倒する投球ではないものの、打たせてアウトに仕留めている。

 来シーズンのローテーション入りは、確定こそしていないものの、現時点の可能性は高い。ロイヤルズが再建中であることも、ケラーには追い風となる。開幕までにFAの大物投手が加入し、ケラーがローテーションから押し出される事態は起きない。

 ヨハン・サンタナのようなエースに、ケラーがなるとは思えない。ルール5ドラフトで指名されたサンタナは、サイ・ヤング賞を2度受賞した。それでも、ローテーションの一員としてケラーがこれからも投げ続け、サンタナやホアキム・ソリアらとともに、ルール5ドラフトで「発掘」された投手の(それほど長くはない)リストに名を連ねる――。そうなったとしても、おかしくはない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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