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規定投球回に達したのは4年前の1度だけ。それでも、FA市場では大人気

宇根夏樹ベースボール・ライター
ネイサン・イオバルディ Jul 29, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ボストン・レッドソックスからFAになったネイサン・イオバルディが、大人気を博している。ボストン・グローブのニック・カファードによると、レッドソックスを含む9球団が興味を示しているという。さらに、カファードはもっと増えそうだとも報じている。また、カファードの記事が出る前に、MLBトレード・ルーマーズのティム・ダーケスは、10球団が契約に動くだろうと予想していた。

 イオバルディが規定投球回をクリアしたのは、2014年の1度だけだ。防御率3.50未満のシーズンも、106.1イニングで3.39を記録した2013年しかない。今シーズンは、タンパベイ・レイズとレッドソックスで計111.0イニングを投げ、防御率は3.81だった。

 にもかかわらず、多くの球団から熱い視線を注がれている理由の一つには、速球のスピードがある。スタットキャストによると、今シーズンの4シームは、平均球速97.2マイル。これは、4シームと2シーム、シンカーを計700球以上投げた投手のなかで9番目に速く、リリーフ投手を除くと、ルイス・セベリーノ(平均97.6マイル/ニューヨーク・ヤンキース)とノア・シンダーガード(平均97.4マイル/ニューヨーク・メッツ)に次ぐ。ちなみに、2シームとシンカーはイオバルディの持ち球になく、4シームの他には、カッター、スプリッター、スライダー、カーブを投げる。

 2016年の夏、イオバルディは高校時代に続いて2度目のトミー・ジョン手術を受けた。そこから2年を経て、今夏のレッドソックス移籍後は防御率3.33を記録した。多くの球団は、これを全盛期の幕開けと判断しているのだろう。イオバルディは、来シーズンの開幕を29歳で迎える。

 目を惹く実績に欠ける上、他にも故障歴は皆無ではなく、リスクは伴うものの、その分、手頃な値段に落ち着きそうな点も、球団にとっては魅力だ。契約は、年平均1500万ドル前後の4~5年になると思われる。あるいは、これこそが人気を集めている最大の理由かもしれない。

 万が一、先発投手としてはうまくいかなくても、これだけの速球を持っていれば、数年前までのアンドルー・ミラーや今シーズンのジョシュ・ヘイダー(ミルウォーキー・ブルワーズ)のようなリリーフ投手になれそうだ。実際、今年のポストシーズンで、イオバルディはリリーフ投手としても好投した。ワールドシリーズの第3戦では、延長12回から18回まで投げた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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