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クオリファイング・オファーを断っても、元の球団へ戻るFAは少なくない。今オフの6人は?

宇根夏樹ベースボール・ライター
パトリック・コービン(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)Apr 17, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7人のFAが、1年1790万ドルのクオリファイング・オファーを申し出られ、ヒョンジン・リュ(ロサンゼルス・ドジャース)を除く6人は、それを断った。

 クオリファイング・オファーは、2012年のオフに始まった。今オフの7人を含め、申し出られたFAは延べ80人を数える。現在のルールでは、前に申し出られたことのあるFAは対象にならないが、かつてはそうではなかった。黒田博樹ネルソン・クルーズアービン・サンタナイアン・デズモンド(現コロラド・ロッキーズ)、デクスター・ファウラー(現セントルイス・カーディナルス)は、5人とも2年続けて申し出られ、いずれも断っている。

 80人中、クオリファイング・オファーを受け入れたのは、リュが6人目だ。2015年のオフはブレット・アンダーソンコルビー・ラスマスマット・ウィータースの3人、2016年のオフはジェレミー・ヘリクソンニール・ウォーカーの2人が、クオリファイング・オファーを受け入れて、元の球団へ戻った。2015年のオフは1年1580万ドル、2016年のオフは1年1720万ドルだった。

 それ以外にも、元の球団と再び契約する選手は少なくない。昨オフまでにクオリファイング・オファーを断った延べ68人中、45.6%に当たる31人は、それまでプレーしていた球団と契約した。クオリファイング・オファーを受け入れた5人を含めれば、移籍しなかった選手はほぼ半分の49.3%(36/73)だ。ちなみに、黒田は2度ともニューヨーク・ヤンキースへ戻り、クルーズとサンタナは2度とも違う球団へ移った。デズモンドとファウラーの2人は、どちらも1度目は元の球団、2度目は違う球団と契約した。

 今オフの6人の場合、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからFAになったパトリック・コービンA.J.ポロックは、来シーズン、違うユニフォームを着ているはずだ。ダイヤモンドバックスは再建に向かうようで、ポール・ゴールドシュミットザック・グレインキーを放出する話も出ている。ファンクレッドのジョン・ヘイマンは、トレードについて、ダイヤモンドバックスは他球団と交渉する用意があるとツイートしている。拒否されるのを承知で、コービンとポロックにクオリファイング・オファーを申し出たのは、彼らが他球団と契約した際に得られるドラフト指名権が目的だと思われる。

 また、USAトゥデイによると、ブライス・ハーパー(前ワシントン・ナショナルズ)と代理人のスコット・ボラスは、ナショナルズから提示された10年3億ドルの契約を却下したという。だからと言って、再契約の線が完全に消えたわけではないが、他のポジションの補強も必要な状況を考えると、ナショナルズとしてはこれ以上の上積みはしにくいのではないか。

 あとの3人、ダラス・カイクル(前ヒューストン・アストロズ)、ヤズマニ・グランダル(前ドジャース)、クレイグ・キンブレル(前ボストン・レッドソックス)については、まだ動きが見えず、予想しにくいものの、アストロズが先発投手、ドジャースは捕手を必要としているのは確かだ。それぞれ、再契約を交わしてもおかしくない。レッドソックスは「ワールドチャンピオンの新クローザーは、かつて広島カープで投げたあの投手!?」で紹介したとおり、球団にいる投手のクローザー抜擢も考えているようだが、ブルペンからは、ポストシーズンで好投したジョー・ケリーもFAになっている。2人ともはともかく、どちらか一方を呼び戻す可能性はありそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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