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キングの悲願は叶わないのか。マリナーズが「最もポストシーズンから遠ざかる球団」の称号を返上しても

宇根夏樹ベースボール・ライター
フェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)Jul 28, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シアトル・マリナーズの3人、フェリックス・ヘルナンデスカイル・シーガーザック・デュークには共通項がある。フェリックスの先発396登板、シーガーの出場1104試合、デュークの514登板は、いずれも、ポストシーズンの試合に出場したことがない現役選手では最も多い。この夏のトレードで、デュークがミネソタ・ツインズから加入し、生え抜きの2人と合流した。

 とはいえ、シーガーは歴代200位にも入っておらず、最多のアーニー・バンクス(2528試合)と比べれば、まだ半数以下だ。デュークの上にも、987登板のリンディ・マクダニエルを筆頭に40人以上が並ぶ。また、それぞれの現役2位は、1091試合のジャンカルロ・スタントン(ニューヨーク・ヤンキース)と474登板のスティーブ・シーシェック(シカゴ・カブス)だ。どちらも、シーガーとデュークとはそれほど離れていない。

 けれども、フェリックスは違う。歴代最多のファーギー・ジェンキンス(594先発)とは差があるものの、上から7番目に位置する。現役2位のウェイド・マイリー(ミルウォーキー・ブルワーズ)は、フェリックスのほぼ半数の202先発だ。

 7月1日の時点で、マリナーズはワイルドカード・レースの2位にいて、3位のオークランド・アスレティックスに8ゲーム差をつけていた。その順位は1ヵ月経っても変わっていないが、8月1日時点のゲーム差はゼロ。勝率でわずかに上回るに過ぎない。一時はかなり有望に思えた17年ぶりのポストシーズン進出に、暗雲とまではいかないにせよ、怪しい雰囲気が立ち込めてきた。

 また、マリナーズが今秋、「最もポストシーズンから遠ざかる球団」の称号を返上しても、フェリックスがポストシーズンで投げられるかどうかはわからない。現在のフェリックスは、数年前までのような「キング・フェリックス」ではない。防御率だけを見ても、2014年の2.14から、3.53→3.82→4.36と毎年悪化し、今シーズンは5.58に達している。ポストシーズンへ向けてチームを牽引するどころか、足を引っ張っている感もある。いつ、ローテーションから外されてもおかしくなく、フェリックスは一度もリリーフとして投げたことがない。

 アダム・ダンは2001試合に出場した後、4年前に初めてポストシーズンを経験した。8月末にシカゴ・ホワイトソックスからアスレティックスへトレードされ、アスレティックスはワイルドカードをゲットした。けれども、ワイルドカード・ゲームで敗れ、アスレティックスはポストシーズンから姿を消した。ダンはその試合に出場せず、トレード時点で表明していたとおり、選手生活にピリオドを打った。

 フェリックスが今シーズン限りで引退することはないだろう。現在の契約は、来シーズンまで残っている。だが、今秋のポストシーズンでダンと同じような目に遭う可能性は――そうならないことを願うが――否定できない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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