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トレード・デッドライン総括。最大のサプライズは、あのエースをあの球団が獲得したこと!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・アーチャー Jul 14, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月31日のトレード・デッドラインが過ぎた。オールスター・ゲーム後に40件以上のトレードが成立し、移籍した選手は100人を超える。

筆者作成
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 内野にマニー・マチャドブライアン・ドージャーを加え、ロサンゼルス・ドジャースは打線をさらにパワーアップさせた。昨シーズンのホームランは、2人合わせて67本。今シーズンも、移籍前に計40本を放っている。

 マチャドを逃したミルウォーキー・ブルワーズも、パワーのある内野手2人を獲得した。こちらのホームランは、昨シーズンが計70本、今シーズンの移籍前は計37本。ただ、マイク・ムスタカスの加入に伴い、トラビス・ショウを三塁から未経験の二塁へ動かしたが、数日後に入手したジョナサン・スコープは二塁手だ。ブルワーズはスコープを遊撃に据えるつもりか。現在の遊撃手、オーランド・アルシアのOPSは.500を割っている。プロ入り当初、スコープは主に遊撃を守っていた。ちなみに、マチャドを獲得できていれば、遊撃手をアルシア→マチャドとするだけで、ポジションの変更は不要だった。

 最大のサプライズは、ピッツバーグ・パイレーツがクリス・アーチャーを獲得したことだろう。ナ・リーグ中地区では、首位と7ゲーム差の3位。ワイルドカードの2枠目までは3.5ゲーム差ながら、間に2チームを挟んでいる。オフに投打の柱を放出――ゲリット・コールをヒューストン・アストロズ、アンドルー・マッカッチェンをサンフランシスコ・ジャイアンツへトレード――したことからすれば、健闘していると言えるが、ポストシーズンに進めるかどうかは微妙なところだ。

 にもかかわらず、アーチャーを手に入れたのは、今シーズンのためだけではない。「エースのトレード放出は、この球団のお約束。先代の3人に続いて4人目もそうなる?」でも書いたとおり、球団オプションを行使すれば、パイレーツはアーチャーを2021年まで保有できる。しかも、その年俸はエースとしてはかなり安い。

 タンパベイ・レイズがトミー・ファムを手に入れたのは、来シーズン以降に向けた動きだ。カンザスシティ・ロイヤルズのブライアン・グッドウィン獲得もそう。一方、セントルイス・カーディナルスはファムを放出したものの、まだ今シーズンをあきらめてはいないはずだ。ナ・リーグ中地区でもワイルドカード・レースでも、パイレーツのすぐ下に位置している。

 なお、8月に入ってもトレードは起きる。それについては、1年前に「トレード・デッドラインを過ぎても、補強はできる。8月のトレードを簡単に説明すると…」で書いた。昨年のワールドシリーズで優勝したアストロズは、8月31日にジャスティン・バーランダーを獲得した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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