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「投手→野手→投手」と動いたリリーフ投手が、一塁や外野ではなく三塁を守った理由

宇根夏樹ベースボール・ライター
アダム・ムーア(左)とセルジオ・ロモ Jul 25, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 マウンドにいる投手を続投させたいが、この打者に限っては別の投手を起用したい。そういう時、監督は投手を違うポジションへ移し、次に登板した投手が役目を終えた後、その前に投げていた投手に再びマウンドへ戻す。

 いくつか例を挙げると、昨年4月、ニューヨーク・ヤンキースにいたブライアン・ミッチェル(現サンディエゴ・パドレス)は、マウンドから一塁、一塁からマウンドへ移った。2014年6月には、トニー・シップ(ヒューストン・アストロズ)が別々の試合で、「投手→ライト→投手」と「投手→レフト→投手」を経験した。

 1986年7月には、ニューヨーク・メッツのジェシー・オロスコロジャー・マクダウェルが、10回裏からの5イニングを2人で投げ、オロスコは「投手→ライト→投手→ライト」、マクダウェルは「投手→ライト→レフト→投手」と動いた。今から2年前の6月には、「1試合に6人がレフトを守り、そのうち3人は投手。彼らを起用したのは、もちろんあの監督だった」で紹介した試合もあった。

 日本プロ野球では、マウンドと一塁を行き来した「遠山・葛西スペシャル」が有名だろう。今年6月にホゼ・アルバラード(タンパベイ・レイズ)が動いたのも、「投手→一塁→投手」だった。

 これ以外のケースも、投手が一時的に「避難」するポジションは、ほとんどの場合、一塁、レフト、ライトのいずれかだ。一塁手は他の内野手と比べ、捕球のみで送球を伴わないプレーが多い。ライトとレフトは、センターほど守備力を必要としない。

 ところが、アルバラードの1ヵ月後、彼のブルペンメイトであるセルジオ・ロモは、登板と登板の間に三塁を守った。

 アルバラードもそうだが、ロモは元野手ではなく、最初から投手だ。また、アルバラードは一塁守備の前後に計3人と対戦し、誰もアウトにできなかったが、ロモもそうならないようにとケビン・キャッシュ監督が考え、一塁ではなく三塁を守らせたわけでもあるまい。

 理由はシンプルだと思われる。ロモが三塁の守備についた時、打席には左打者のグレッグ・バード(ヤンキース)がいた。しかも、バードは逆方向へ打つことの少ないプル・ヒッターだ。この打席でも、二塁ゴロに終わった。

 MLBランダムスタッツのジェレミー・フランクによれば、シーズン40登板以上&三塁守備はロモが4人目で、他の3人が記録したのは19世紀だという。また、三塁を守った試合でセーブを挙げたのは、1913年のジョー・ゲデオン以来らしい。

 今シーズン、ロモはセットアッパーとクローザーに加え、「オープナー」としても投げている。5月19~20日には、2日続けて先発マウンドに上がった(「通算589登板目に初先発した救援投手が、そこから2日続けて先発マウンドへ。今度は大谷翔平と投げ合う」)。次は、どんな役割を演じ、どんな記録を作ってくれるのだろうか。

 ちなみに、昨シーズンの最終戦で、ロモはバット・ボーイを務めている。

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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