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宮内庁長官の『週刊新潮』批判など女性皇族めぐる議論の波紋、そして秋篠宮家の内情は…

篠田博之月刊『創』編集長
(写真:Motoo Naka/アフロ)

西村宮内庁長官の『週刊新潮』批判

 5月23日の定例記者会見で宮内庁の西村泰彦長官は、同日発売の『週刊新潮』5月30日号の記事について強く否定したという。

 記事は「ついに国会で『安定的皇位継承』議論 憂慮の果て『美智子さま』が動かれた」と題するもので、皇族数の確保策に関する与野党協議が17日から2年4カ月ぶりに再会されたことを受けたものだった。約2年間も棚上げになっていたこの議論が動き出したのは、2023年10月に就任した額賀福志郎衆院議長の意向によるもので、「額賀議長が“前のめり”になっているのは、上皇后さまからの『重いお言葉』があったからだ」という。

 記事中で匿名の宮内庁関係者がこう証言している。

「額賀議長は就任後、上皇ご夫妻に謁見する機会があり、その際に上皇后さまから『(皇位継承に関する議論を)よろしく進めてくださいね』というご趣旨のお声がけを賜っているのです」

 宮内庁長官はそういう事実はなかったとし「皇室の方々が政治的関与を行ったという誤解を招きかねない内容であり、見過ごすわけにはいかない」と反論したのだった。2023年12月に上皇后さまの誕生日祝賀のために額賀議長が上皇夫妻に面会したのは事実だが、記事に書かれたようなやりとりはなく、かつ『週刊新潮』から事実確認があった際にもそういう事実はないと回答したのにその否定コメントなしに記事が書かれたことも批判したという。

『週刊新潮』5月30日号(筆者撮影)
『週刊新潮』5月30日号(筆者撮影)

『週刊新潮』側は、確かな情報源から得た情報だとしており、双方の見解は対立したままだ。そもそも『週刊新潮』の記事は、2024年10月に90歳を迎える上皇后が、皇室の次代を気にし「皇室の先細り」を危惧しているという趣旨だ。皇室の行方を案じる上皇后の意向を強調する文脈の中で、額賀議長とのエピソードも飛び出したわけだ。

 さて、「安定的皇位継承」をめぐる議論の中で、「女性宮家」など安倍政権下で封印されていた構想が再び脚光を浴び、テレビなどで報じられている。愛子さまや佳子さまが結婚を意識して不思議でない年齢になったこともあり、与野党協議のなかで女性皇族の問題が本格的に議論されることになりそうだ。

 前述の『週刊新潮』でも紹介されているが、「4月下旬、共同通信の世論調査では90%が『女性天皇を認める』に賛成という結果が示された。また今月19日には、毎日新聞の調査でも賛成が81%に達していた」。この何年か、#MeTooの風が強く吹き、NHKの「虎に翼」など女性問題をテーマにしたドラマが人気を博するなど、ジェンダー平等への動きが加速されているから、この調査結果は当然でもあるのだが、保守ないし右派にとっては、女性天皇などは受け入れがたい事柄で議論は難航も予想される。ただ、何とかしなければ皇族減少が進むばかりだという懸念は、上皇后始め皇室にも広がっているというわけだ。

 ちなみに朝ドラ「虎に翼」に関して『女性セブン』6月6日号は「愛子さま『雅子さまと毎朝『虎に翼』女の壁への憤懣」という記事を掲載。雅子さまが愛子さまとそのドラマを観ていると報じている。伝聞情報なのだが、本当だとしたらなかなか興味深い話だ。

女性皇族めぐる議論と佳子さまの相手候補騒動

 社会に浸透するジェンダー平等という時代の流れと、男尊女卑の考え方に基づいている皇室の基本的体系とのギャップは、象徴天皇制の基本的矛盾だから、この議論は簡単ではないのだが、当面の課題になるのは愛子さまや佳子さまの結婚問題だろう。

 実際、この1~2年、愛子さまと佳子さまの結婚にまつわる週刊誌報道がかなり増えている。愛子さまなど、本当に本人がそれほど強く結婚願望を持っているのか不明なのだが、週刊誌では次々とお相手候補の話が浮上している。佳子さまについてはもちろんで、最近で言えば『週刊女性』6月4日号の「佳子さま猛進!“勝負ワンピース”で見据える悲願」だ。

 5月11日に林野庁などが主催した「みどりの感謝祭」に臨席した佳子さまが、姉の眞子さんから譲り受けた緑のワンピースを着ていた。それが週刊誌などでは結婚の意思を示す“勝負服”ではないかとされているのだ。

 そしてその佳子さまの相手候補として有力視されているのが旧華族・島津家の末裔である銀行マンだというのだ。同記事によると、4月中旬に旧華族・島津家ゆかりの会合に佳子さまが出席したのはお見合いの意味があったといわれているという。

『週刊現代』6月1日号(筆者撮影)
『週刊現代』6月1日号(筆者撮影)

 しかしこの報道については、お相手候補とされた男性を『週刊現代』が直撃。6月1日号で「佳子様のお相手候補 『島津家の御曹司』が本誌直撃に語った」と題して、そのやりとりを紹介している。その男性は、その4月13日の島津家の集まりにはそもそも出席していないと、噂を否定したのだった。突然の週刊誌の直撃に男性が応じたのは、お見合い相手などと勝手に報じられているのを否定したいという意図があったからだろう。

『週刊文春』もその男性の関係者に直撃して、その様子を5月30日号に掲載しているが、父親はこう答えている。

「(四月の錦江会には)私も息子も出ておりません。興味本位のお話が、世の中で一人歩きしているので…」

佳子さまの結婚観に変化があったとの指摘

 ちなみに『週刊文春』のこの記事は、「秋篠宮家の危機」という大型連載の第2弾で、「小室圭さん&眞子さんが変えた佳子さま結婚計画」という見出しがついている。

『週刊文春』や『文藝春秋』では、佳子さまが、不自由な皇室から脱け出るために結婚して皇籍離脱をと強く望んでいたという話が報じられてきた。佳子さまはそういう意思があって、姉の眞子さんの結婚も一貫して応援してきたというわけだ。

 今回の記事は、その佳子さまの考え方が、このところ少し変わりつつあるという内容だ。姉の結婚が社会から猛烈なバッシングを受けたのを見てきたことや、秋篠宮家改築で両親と別居して一人暮らしを始めたことで、いろいろ考えるところがあったらしいというのだ。「いますぐにでも結婚して皇室を出たい」という焦りの気持ちは薄れつつあるという。

 いずれにせよ佳子さまら女性皇族の結婚問題は、「女性宮家」創設といった話を結びついており、今後も議論になり、週刊誌で取りざたされるのは確実だろう。宮内庁や皇室関係者が彼女らの結婚についていろいろ案じているのは確かで、それが不確かな「お相手」報道に直結していくのもしばらく続くのかもしれない。

『週刊文春』5月30日号(筆者撮影)
『週刊文春』5月30日号(筆者撮影)

 さて、ここで取り上げた『週刊文春』の連載「秋篠宮家の危機」についても言及しておこう。

 5月23日号から突然、大々的にスタートしたのだが、第1回のテーマは「警察との暗闘」だった。

 2月に吉田尚正元警視総監が秋篠宮家に関わる皇嗣職大夫に就いたことは以前、下記の記事に書いた。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/91f5ebf629dee3f3d8200d97f02ae1b4f6fc315b

大反響の皇室SNS発信と、気になる秋篠宮家めぐる広報体制強化の動き(4月29日付)

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/071ff9d491ca81d3016b270c3a24fbc2fa2099fe

秋篠宮家の内情をめぐる『週刊現代』の2週にわたる報道が気になる(5月7日)

 そこで紹介した『週刊現代』5月11日号に続いて『週刊文春』の連載は始まっているから、『週刊現代』がスクープした紀子さまのものと思われる極めて高額な薬代など、秋篠宮家に起きている内情について取材を進めているのは間違いない。

 取材力に定評のある『週刊文春』だけに、いったい秋篠宮家で何が起きているのか、ぜひ詳細な記事を期待したい。ただ、それが第2弾でも出てこないのを見ると、やはり菊のカーテンに閉ざされた皇室の内情に迫るのは簡単ではないということなのだろうか。

 ただ連載の第1弾「警察との暗闘」もかなり興味深い内容だった。少し紹介しよう。

秋篠宮家と警備警察の間で「暗闘」が!?

 2024年2月に吉田尚正元警視総監が秋篠宮家に関わる皇嗣職大夫に就いたことは先の記事でも書いたが、その時期からそれまで定員10人の宮務官の一人は警察出身者が占めていたのをやめることになった。「秋篠宮家と警察は“暗闘”を繰り広げ、その亀裂が人事にまで影響を及ぼすことになった」のだという。

 もともと秋篠宮家は警備の簡素化を唱え、警察側は頭を痛めていたらしい。19年に夫妻らがブータンに私的旅行をした際には、警察出身の宮務官が独自に外務省と調整を行っていたことに秋篠宮さまが不信感を抱き、宮務官は更迭されたという。

 悠仁さまの警護をめぐっても「普通の子と同じように」という両親と警備側に認識の違いがあるという。「悠仁さまは登校時、学校の近くで送迎の車を降りた後、二百メートルほど歩いて正門へ向かわれる」。警備担当者が「本当は送迎の車を門に横づけしたいのですが、秋篠宮さまからNGが出た」と証言。宮内庁関係者は「警備の在り方にも多くが不安を覚えていますが、ご夫妻に物を申せないのが現状なのです」とコメントしている。

 紀子さまが職員に厳しいというのは以前から週刊誌が書いてきたが、警察庁出身の職員が「あなたは国家公務員ではなく、使用人です」と叱責されたこともあるという。ただこれらは匿名の証言で、信憑性はわからない。

 ともあれ、秋篠宮家と警察の関係が「暗闘」と言われるような事態に至っているというのは興味深い指摘だ。これに続く第2弾が前述した佳子さまの結婚問題だ。第3弾はどこまで秋篠宮家の内情に肉薄できるのか、注目したい。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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