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ドミニカン最多は244勝のコローン。では、他の国の1位は? USAはサイ・ヤング、日本は野茂英雄…

宇根夏樹ベースボール・ライター
フリオ・テラーン(アトランタ・ブレーブス)May 25, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月18日、バートロ・コローン(テキサス・レンジャーズ)が通算244勝目を挙げ、ホアン・マリシャルを抜いて、ドミニカ共和国生まれの単独トップに立った。

 他の国で生まれた投手では、ベネズエラ最多の通算166勝を挙げているフェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)も、コローンと同じく現役メジャーリーガーだ。フェリックスは昨年6月に、通算156勝のフレディ・ガルシアを上回った。

ベースボール・リファレンスを基に筆者作成
ベースボール・リファレンスを基に筆者作成

 コローンとフェリックスを含め、それぞれの国の1位は表のとおり。この他の国には、通算100勝以上の投手がいない。例えば、パナマでは、通算82勝のマリアーノ・リベラブルース・チェンが1位に並ぶ。リベラが記録した通算652セーブは、生まれた国を問わず、古今のメジャーリーガーの誰よりも多い。

 シーズンごとの白星は投球内容と乖離することも珍しくなく、評価の指標に用いるのにふさわしくないが、通算となると話は少し違ってくる。メジャーリーグで投げ続けなければ、100勝以上は積み上げられない。表の15人のうち、14人のキャリアは12シーズン以上にわたる。

 また、サイ・ヤング賞投手とホール・オブ・フェイマー(殿堂入り選手)はそう多くないものの、オールスター・ゲームに選ばれたことのある投手は10人を数える。他の5人のうち、ジャック・クインは初めてオールスター・ゲームが開催された1933年がラスト・イヤーで、4人はその前にキャリアを終えている。実質的に、選出されたことのない投手はほぼ皆無ということだ。

 なお、通算100勝以上に限ると、フェリックスとコローンに続き、生まれた国の最多勝記録を塗り替える投手は、当分現れそうにない。日本の場合、岩隈久志(マリナーズ)は現役最多の63勝を挙げているが、それでも、野茂英雄に並ぶにはあと60勝を要する(2人の間には、79勝の黒田博樹がいる)。

 むしろ、別の国から、その国で生まれた初の100勝投手が誕生する方が早そうだ。ホゼ・キンターナ(シカゴ・カブス)とフリオ・テラーン(アトランタ・ブレーブス)は、ともにコロンビア生まれでは最多の63勝を挙げている。2人とも、今シーズンもローテーションの一員として投げていて、5月14日は同じ試合でマウンドに上がった。この時はテラーンに白星、キンターナに黒星がついたが、2年前は逆に、キンターナが勝利投手、テラーンが敗戦投手となった。他の投手も含め、コロンビア生まれの投手が先発として投げ合ったのは、この2試合だけだ。

 まだ先の話ではあるが、夢は膨らむ。2人が99勝で並び、コロンビア初の100勝をかけて同じ試合に先発する。あるいは、別々の試合に登板し、同じ日に2人揃って100勝に到達する。どちらのシナリオも捨て難い。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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