ハードボーラーの世代交代!? チャップマンを凌ぐ21歳の豪腕が現れた
2年前に「ヤンキースに105マイルの豪腕現る。その名はアロルディス・チャップマンではなく…」という記事で、アーロン・ヒックス(ニューヨーク・ヤンキース)の送球が105.5マイルを記録したことを書いた。
もっとも、ヒックスは投手ではなく外野手だ。助走をつければ、球速は上がる。今年1月には、トレバー・バウアー(クリーブランド・インディアンズ)が走り込んで投げ、116.9マイルを出した。
スタットキャスト(Statcast)時代が幕を開けた2015年以降、シーズン最速の球を投げたのは、3年続けてアロルディス・チャップマン(ヤンキース)だった。2015年と2016年はどちらも、全投手による全投球のトップ50が、チャップマンに独占された。MLB.comでは、このランキングに「チャップマン・フィルター」を設けている。左上にあるチャップマンの顔写真をクリックすると、彼の投球を除いたトップ50が表示される。
昨シーズンも、トップ50のうち44球はチャップマンが占めた。他は、ピッツバーグ・パイレーツのフェリペ・バスケス――「改名したことをファンに謝った、律儀なクローザー」で書いたとおり、当時はフェリペ・リベロだった――とボストン・レッドソックスのジョー・ケリーが3球ずつランクインしただけ。それぞれの最高位は、リベロが24位、ケリーは41位だった。
ところが、今シーズンは異変が起きている。チャップマンは12球しかランクインしておらず、最高位は9位だ。1位から8位までは、アーロン・ヒックスならぬ、ジョーダン・ヒックス(セントルイス・カーディナルス)の名前が並ぶ(トップ50中17球)。ちなみに、アーロンとジョーダンは他人同士。同じラストネームは偶然に過ぎない。
チャップマンは30歳、メジャーデビューしたばかりのヒックスは21歳だ。ハードボーラーのトップが世代交代し、「チャップマン・フィルター」は要らなくなるのだろうか。
そうであってもおかしくないが、断言するのは早いかもしれない。今シーズン、チャップマンの最速は100.8マイルながら、これまではシーズン最速として、103.9マイル(2015年)、105.1マイル(2016年)、104.3マイル(2017年)を記録している。今のところ、ヒックスの最速は101.6マイルだ。チャップマンは過去2年とも、それぞれのシーズン最速トップ10となる10球を、すべて後半戦に投げている。2015年は前半戦と後半戦が5球ずつだが、6月20日以前は1球(5月11日)しかなかった。
なお、かつてのチャップマンと同じように、ヒックスも制球に課題を抱える。いくら球が速くても、クローザーとなるまでには、まだ時間を要しそうだ。