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メジャーデビュー直前のプロスペクト2人。一方は2400万ドルで契約延長、一方は3000万ドルを却下

宇根夏樹ベースボール・ライター
オースティン・ローマイン(左)とロナルド・アクーニャ Mar 12, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 スコット・キンガリー(フィラデルフィア・フィリーズ)もロナルド・アクーニャ(アトランタ・ブレーブス)も、将来を嘱望されているものの、まだメジャーデビューはしていない。

 3月25日、フィリーズはキンガリーと6年2400万ドルの延長契約を交わした。これまで、メジャーデビュー前に契約を延長された選手は、ジョン・シングルトン(ヒューストン・アストロズ)しかいなかった。シングルトンは2014年6月のメジャーデビュー直前に、5年1000万ドルの延長契約に合意した。エバン・ロンゴリア(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)は2008年4月にタンパベイ・レイズと6年1750万ドルの延長契約を交わしたが、これはメジャーデビューの数日後だった。

 一方、アクーニャは、ブレーブスが申し出た3000万ドルの延長契約を断ったという。ESPNのアルトゥーロ・マルカーノが、3月26日にツイッターで報じた。

 アクーニャは20歳の外野手、キンガリーは23歳の二塁手だ。今春のプロスペクト・ランキングで、アクーニャはベースボール・アメリカとベースボール・プロスペクタスから1位、MLB.comからは2位に挙げられた。キンガリーはそれぞれ、31位、31位、35位。こうして比べると、年齢と期待値の違いは、延長契約を受け入れるかどうかの判断を分ける要因――それだけではないだろうが――になったようにも思える。

 キンガリーが期待どおりに活躍すれば、フィリーズにとっては安い買い物になる。年平均は400万ドルにしかならない。契約には球団オプションが3年ついていて、フィリーズがすべて行使すると9年6500万ドルとなるが、こちらも年平均は722万ドルに過ぎない。アクーニャの場合、期待どおりに活躍すれば、もっと高額の契約を手にできる。

 ちなみに、シングルトンは現在もアストロズにいるが、メジャーリーグでプレーしたのは2014~15年の計114試合だけだ。今年1月にはドラッグ検査に引っかかり、2012年の6月と12月に続く3度目ということで、100試合の出場停止を科された。今シーズンは5年契約の5年目。こちらも球団オプションが3年ついているものの、アストロズが行使する可能性は限りなく低い。

 アストロズからすると、シングルトンとの延長契約は失敗ということになる。それでも、金額としては大した痛手ではない。フィリーズがキンガリーと交わした延長契約についても、同様のことが言える。

 契約を延長したキンガリーは、メジャーリーグで開幕を迎えるだろう。まずはユーティリティとして起用されそうだが、早ければ開幕戦にメジャーデビューする。それに対し、アクーニャがメジャーリーグに昇格してデビューするのは、4月半ば以降の見込みだ。ブレーブスはこれによってサービスタイムを調整し、アクーニャがFAになるのを1年遅らせる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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