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ダルビッシュを放出したレンジャーズと獲得したドジャースの損得勘定

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョナサン・ルクロイ(右)はロッキーズへトレードされた Jul 26, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 トレード・デッドラインの7月31日に、ダルビッシュ有がテキサス・レンジャーズからロサンゼルス・ドジャースへ移籍した。

 レンジャーズとしては、トレードには出さず、シーズン終了後にFAとなったダルビッシュにクオリファイング・オファー(QO)を申し出る方法もあった。そうすれば、ダルビッシュがQOを受け入れずに他球団と契約した場合、レンジャーズには2018年のドラフト指名権が一つ与えられる。

 QOは1年契約で、年俸は上位125選手の平均額だ。昨オフは1720万ドルだった。今オフもその前後になるだろう。ダルビッシュが受け入れることは、まずあるまい。

 ただ、労使協定が変更されたため、レンジャーズが手にできるドラフト指名権は、これまでのような1巡目と2巡目の間ではなく、2巡目と3巡目の間だ。レンジャーズはそれよりも、ダルビッシュをトレードに出して若手を得る方がいいと判断した。

 レンジャーズはダルビッシュと交換に3人のマイナーリーガー、22歳のウィリー・キャルフーン(二塁手/外野手)、19歳のA.J.アレクシー(右投手)、20歳のブレンダン・デービス(内野手)を獲得した。

 彼らのドラフト指名はいずれもドラフト4巡目以降だが、キャルフーンは今シーズン、AAAの99試合で打率.298、出塁率.357、23本塁打を記録している。7月初旬にベースボール・アメリカが発表したプロスペクト・ランキングでは、全体74位に挙げられた。3人という人数も併せて考えると、レンジャーズとしてはまずまずといったところだろう。数ヵ月後にFAとなる、レンタルに過ぎない選手では、そう大きな見返りは望めない。

 一方、ダルビッシュを獲得したドジャースのゴールが、29年ぶりのワールドチャンピオンであることは言うまでもない。ブルペンには2人の左腕、トニー・シングラーニ(←シンシナティ・レッズ)とトニー・ワトソン(←ピッツバーグ・パイレーツ)を加えた。

 加えて、ドジャースはトップ・プロスペクトを一人も手放さず、ダルビッシュを手に入れた。23歳のウォーカー・ビューラー(右投手)、21歳のアレックス・バーデューゴ(外野手)、21歳のヤディアー・アルバレス(右投手)がそうだ。ベースボール・アメリカによる3人のランキングは、17位、35位、60位。MLB.comは彼らを、ドジャースのプロスペクト・トップ3としている。

 ダルビッシュが好投しても、ドジャースのワールドチャンピオンが約束されるわけではないし、トップ・プロスペクトが期待どおりに育つとは限らず、そうでない選手が大成することもある。だが、現時点においては、レンジャーズとドジャースのどちらも、このトレードの損得勘定はプラスではないだろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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