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2人の記者がバーランダーに投票していれば、サイ・ヤング賞の行方は変わっていたのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケイト・アップトン(左)とジャスティン・バーランダー OCT 29,2016(写真:Splash/アフロ)

「ヘイ、MLB、ジャスティン・バーランダーにファックできるのは私だけと思ってたわ?! 2人の記者が彼に投票しなかったってどういうこと?」

婚約者がサイ・ヤング賞を逃したことに対し、ケイト・アップトンはこうツイートした。

サイ・ヤング賞の投票で、バーランダー(デトロイト・タイガース)は14人から1位票を得た。受賞したリック・ポーセロ(ボストン・レッドソックス)は8人。他は、ザック・ブリットン(ボルティモア・オリオールズ)とコリー・クルーバー(クリーブランド・インディアンズ)が、それぞれ5人と3人だった。一方、ポーセロは137ポイントを得て、132ポイントのバーランダーを上回った。1位票とポイントの順位が一致しなかったのは彼らだけではなく、ブリットンは72ポイントで4位、クルーバーは98ポイントで3位に入った。

サイ・ヤング賞は、各チームをカバーするビート・ライターが2人ずつ、計30人の投票によって決まる。それぞれの記者は、ポストシーズンが始まるまでに1位から5位までの投手を挙げ、1位は7ポイント、2位は4ポイント、3位は3ポイント、4位は2ポイント、5位は1ポイントとして計算される。この方式は2010年からだ。1970~2009年は1~3位の3投手、1969年までは1投手を挙げていた。

ポーセロとクルーバーは、30人全員から票を得た。しかし、アップトンのツイートにあるように、バーランダーは28人にとどまった(ブリットンは24人)。タンパベイ・レイズのビート・ライターは、2人ともバーランダーを選ばなかった。彼らの一方は、ポーセロ、ブリットン、クルーバー、クリス・セール(シカゴ・ホワイトソックス)、田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)を1~5位、もう一方は、ポーセロ、クルーバー、J.A.ハップ(トロント・ブルージェイズ)、ブリットン、アーロン・サンチェス(ブルージェイズ)とした。

ニューヨーク・デイリー・ニューズのマーク・フェインサンド――彼は投票していない――の記事によれば、レイズのビート・ライターのうち1人は、レギュラーシーズンが終わる1週間前に投票したという。バーランダーはその後2度マウンドに上がり、1勝1敗ながら14.2イニングを1失点に抑え、防御率を3.21から3.04まで下げた。ちなみに、バーランダーは7月2日のレイズ戦に登板し、7回2失点で白星を挙げた。

最多の1位票を得ながら受賞できなかったのは、1998年のトレバー・ホフマン(サンディエゴ・パドレス)と2009年のアダム・ウェインライト(セントルイス・カーディナルス)に続く3人目だ。ホフマンの1位票13人は、受賞したトム・グラビン(アトランタ・ブレーブス)よりも2人多かった。ウェインライトの12人は、ティム・リンスカム(サンフランシスコ・ジャイアンツ)の11人だけでなく、クリス・カーペンター(カーディナルス)の9人も上回ったが、ポイントでは2人に次ぐ3位に終わった。

ホフマンもウェインライトも、受賞を逃した要因の一つとして、同じチームに強力なライバルがいたことが挙げられる。ウェインライトにおけるカーペンターと同じように、ホフマンの場合も、チームメイトのケビン・ブラウンが8人から1位票を得て、3位に入った。バーランダーはこのパターンには当てはまらず、タイガースには他に、1ポイントのマイケル・フルマーがいたに過ぎない。

また、ポーセロとバーランダーの5ポイント差は、1970年以降では2番目に接近していた。偶然ながら、2012年にデビッド・プライス(タンパベイ・レイズ)が受賞した時も、4ポイント差の2位にはバーランダーがいた。内訳は、プライスが1位票14人、2位票13人、3位票1人、バーランダーは13人、13人、2人だった。レイズのビート・ライター2人は、どちらもプライスを1位、バーランダーを2位とした。そのうち、1人でも1位と2位を入れ替えていれば、受賞者は違っていた。ただし、2人とも今回とは違う記者だ。

今回に関しても、レイズのビート・ライター2人がバーランダーに票を入れれば、2度目のサイ・ヤング賞となった可能性はあるが、それでも受賞はできなかったかもしれない。ポーセロのポイントが変わらなかったとすると、バーランダーが3位票と5位票、あるいは2人から4位票を得ても計4ポイントにしかならず、ポーセロには届かない。

なお、バーランダーは2011年にサイ・ヤング賞に輝いている。この時は、28人全員――当時のア・リーグは14チーム――から1位票を得た。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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