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NPB経験のある打撃コーチとアシスタント打撃コーチは計10人。元千葉ロッテのメイは急遽メジャーへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
タイ・バンバークレオ March 23, 2008(写真:ロイター/アフロ)

メジャーリーグ(MLB)には日本プロ野球(NPB)を経験しているコーチが少なくない。今シーズンも、その人数は軽く2ケタを超えている。なかでも、打撃コーチは8人と多く、アシスタント打撃コーチを含めると10人に達する。

彼らの選手としてのキャリアはさまざまだ。例えば、トロント・ブルージェイズのブルック・ジャコビー(1993年/中日ドラゴンズ)は、MLBでオールスター・ゲームに2度選ばれ、通算120本塁打を放っているが、クリーブランド・インディアンスのタイ・バンバークレオ(1988~90年/西武ライオンズ、1991年/広島東洋カープ)は通算14試合にしか出ておらず、本塁打はビル・ガリクソンから打った1本しかない。一方、ヒューストン・アストロズでアシスタント打撃コーチを務めるアロンゾ・パウエル(1992~97年/中日、1998年/阪神タイガース)は、NPBで3年続けて首位打者を獲得しているが、中日でパウエルと同僚だったジャコビーは18試合で2本塁打に終わった。

ただ、NPBでの経験以外にも、彼らには共通していることがある。それは指導歴の長さだ。10人中9人は、コーチやインストラクター、コーディネーターとして、10年以上にわたって働いてきた。残る1人、サンディエゴ・パドレスのアラン・ジンター(1999年/西武)も、2008年にアリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のルーキーリーグで打撃コーチを務めたのを皮切りに、マイナーリーグで7年、メジャーリーグで1年の指導歴を持つ。ワシントン・ナショナルズのリック・シュー(1993~94年/日本ハム・ファイターズ)とボルティモア・オリオールズのスコット・クールボー(1995~96年/阪神)、バンバークレオの3人に至っては、前世紀から選手を指導している。

10人とも、指導者としてのスタートはマイナーリーグだった。選手と同じく、指導者もマイナーリーグからキャリアを始めるのは、NPB経験者に限った話ではない。なかには、今シーズンからマイアミ・マーリンズで打撃コーチを務めるバリー・ボンズや、ロサンゼルス・ドジャースの打撃コーチからパドレスのベンチコーチに転身したマーク・マグワイアら、いきなりメジャーリーグのコーチになる者もいるが、彼らは少数派だ。

コーチの場合、育成や修正などの適性もあるので、マイナーリーグからメジャーリーグへ移ることが必ずしも“昇格”とは限らないが、今シーズンはデリック・メイ(2001~03年/千葉ロッテ・マリーンズ)が、セントルイス・カーディナルスのアシスタント打撃コーチとして“メジャーデビュー”した。メイは今シーズンもカーディナルス傘下のマイナーリーグで打撃コーディネーターを務める予定だったが、ホゼ・オケンドー三塁コーチの右膝が思わしくなく、3月下旬にシーズン全休が決まり、一塁コーチのクリス・マロニーが三塁コーチ、アシスタント打撃コーチのビル・ミラーが一塁コーチに異動したのに伴い、アシスタント打撃コーチになった。

また、ジンターとパウエルはチームが入れ替わった。昨シーズンはアストロズのアシスタント打撃コーチだったジンターは、パドレスの打撃コーチに就任し、ジンターの後釜には、パドレスのアシスタント打撃コーチだったパウエルが座っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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