Yahoo!ニュース

2015年のMLBを振り返る(5)1試合3本塁打:チームメイトが泣いた試合の3発は勝利につながらず

宇根夏樹ベースボール・ライター
ルーカス・ドゥーダ(ニューヨーク・メッツ)Jul 29, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

史上17人目の1試合4本塁打は出なかったものの、2015年は11選手が1試合3本塁打を記録した。

画像

表を見てもわかるように、達成者には数多くのスラッガーが揃う。2015年にナ・リーグ最多タイの42本塁打を叩き込んだブライス・ハーパー(ワシントン・ナショナルズ)をはじめ、シーズン30本塁打以上の実績を持つ選手は9人を数える。アレックス・ロドリゲス(ニューヨーク・ヤンキース)の通算687本塁打は歴代4位だ。A-RODの上には、バリー・ボンズ(762本)、ハンク・アーロン(755本)、ベーブ・ルース(714本)しかいない。

そのなかで、ジャレット・パーカー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)とカーク・ニューエンハイス(ニューヨーク・メッツ)が2015年に放った本塁打は、どちらも2ケタにすら届かない。ただ、パーカーはAAAの124試合で23本塁打を記録している。これは、パシフィックコースト・リーグで5番目に多かった。メジャーリーグでは21試合しか出場しておらず、6本塁打中5本を9月23~26日の3試合に固め打ちした。一方、ニューエンハイスはメジャーリーグの74試合で4本塁打ながら、マイナーリーグの29試合で9本塁打を打っている。2人とも長距離砲とまではいかないものの、まったくの非力でもない。どちらも年齢はすでに20代後半のため、将来有望とは言い難いが、センターを守れる左打者として、これから台頭する可能性は皆無ではないだろう。

1試合3本塁打で挙げた打点は、3ラン本塁打、2ラン本塁打、グランドスラムのエドウィン・エンカーナシオン(トロント・ブルージェイズ)が最も多かった。9打点はマイク・ムスタカス(カンザスシティ・ロイヤルズ)と並び、2015年の1試合最多。ムスタカスは9月12日の試合で、タイムリーヒット、グランドスラム、3ラン本塁打を放ち、9打点を荒稼ぎした。一方、ルーカス・ドゥーダ(メッツ)とケンドリス・モラレス(ロイヤルズ)の1試合3本塁打は、最も打点が少なかった。ソロアーチ3本で3打点。エイドリアン・ゴンザレス(ロサンゼルス・ドジャース)もソロ3本だが、他の打席でも打点を挙げている。

2015年に1試合3本塁打を記録しながら、チームが敗れたのはドゥーダだけだ。この試合は、ドゥーダの3本塁打よりも、チームメイトのウィルマー・フローレスが流した涙が大きく報じられた。ツイッターの速報によってフローレスのトレードを知った観客は、打席に入った彼にスタンディング・オベーションを送った。その後、守備についたフローレスは涙を堪えることができなかった。結局、このトレードは成立せず。メッツはその2日後、フローレスのサヨナラ本塁打によって7連勝をスタートさせた。メッツがデトロイト・タイガースからヨエニス・セスペデスを獲得したのも、ドゥーダの3本塁打から2日後のことだった。

なお、1試合4本塁打は、2012年のジョシュ・ハミルトン(テキサス・レンジャーズ)を最後に途絶えている。ハミルトンの前にカルロス・デルガドが記録したのは2003年。その間には8シーズンの空白があった。

「2015年のMLBを振り返る」

(1)ノーヒッター:「セブンス・ヘブン」に2度関わった投手は2人

(2)サイクルヒット:ベルトレーは史上最多、ケンプは球団初

(3)野手の登板:イチローの防御率はワースト4位タイ

(4)トリプル・プレー:ベース上の転倒がもたらした三重殺も

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事