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2015年のMLBを振り返る(3)野手の登板:イチローの防御率はワースト4位タイ

宇根夏樹ベースボール・ライター
イチロー(マイアミ・マーリンズ)OCTOBER 4, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2015年にメジャーリーグで登板した野手は、ポストシーズンで投げたクリフ・ぺニントンを含め、24人を数えた。4人が2登板ずつしており、延べ28人の野手がマウンドへ。野手から野手への継投も3度あった。

デビュー登板した野手は19人いて、そのうちの一人、ぺニントンは「投手以外で初めてポストシーズンの試合に登板した選手」となった。ベーブ・ルースは2度のワールドシリーズで計3登板したが、1916年のレギュラーシーズンは投手以外の守備についておらず、1918年は野手と投手を兼任していた。リック・アンキールも2000年のポストシーズンで3登板しているものの、彼が野手に転向したのは2005年だ。ぺニントンはリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)の第4戦に、トロント・ブルージェイズの6番手としてマウンドに上がった。その前にぺニントンが投げたのは10年前。大学時代のことだった。

一方、前年までに登板したことがあったのは5人。なかでも、ジョシュ・ウィルソンは2007年と2009年に計3登板の経験を持つ。2009年は内野手として3チームでプレーし、シアトル・マリナーズを除く2チームで登板した。

また、ぺニントンのように引き継いだ走者をホームインさせたケースも含め、24人16人は防御率0.00を記録した。ここでは、デビッド・ロスアイク・デービスに最優秀防御率のタイトルを授けたい。2人ともイニングの頭から2登板し、1イニングずつを無失点に抑えた。ロスに至っては――38歳の捕手がこれから投手に転向することはないだろうが――対戦した6人全員を討ち取った。

防御率ワーストはニック・フランクリンジョニー・ゴームズの18.00。この数字だけ見ると悲惨にも思えるが、本職のリリーバーでも、彼らのような1イニング自責点2はある。ワースト3位は防御率13.50のヘスス・スークレ。最初の登板は無失点だったが、マスクをかぶって岩隈久志のノーヒッターをアシストした3日後に、ホームランを含む5安打を浴び、3点を失った。ワースト4位にはイチロー他4人が防御率9.00で並ぶ。1アウトも取れずに降板した野手はいなかった。

登板のタイミングはジェフ・フランコーアの7回裏が最も早く、それ以外は8回表・裏あるいは9回表。延長戦に入って投手を使い果たし、野手が投げるという事態は起きなかった。登板時の点差はイチローの4点ビハインドが最も少なく、他は少なくとも7点差をつけられていて、21登板は10点差以上だった。イチローが投げたのはシーズン最終戦で、ポストシーズン進出はもちろん、レギュラーシーズンの順位にも無関係だったとはいえ、4点差で野手が登板したことには違和感を覚える。

この点差なら、満塁ホームランが出れば同点に追いつくし、フィリーズはこの試合の7回裏に、ホームランなしで4点を挙げた。また、フィリーズは前日までに99敗しており、球団54年ぶりのシーズン100敗がかかっていた。8回裏にイチローから1点を奪ってリードを広げたフィリーズは、9回表にクローザーのケン・ジャイルズを投入した。ジャイルズは無失点で試合を締めくくった。

「2015年のMLBを振り返る」

(1)ノーヒッター:「セブンス・ヘブン」に2度関わった投手は2人

(2)サイクルヒット:ベルトレーは史上最多、ケンプは球団初

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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