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呪いを解くために集められし者たち。カブスの挑戦はまだ終わっていない

宇根夏樹ベースボール・ライター
シカゴ・カブス(ディビジョン・シリーズ第4戦)OCTOBER 13, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2011年の秋、シカゴ・カブスはセオ・エプスティーンをベースボール運営部門の責任者として招き入れ、その直後にジェド・ホイヤーをGM、ジェイソン・マクラウドを選手育成&スカウティングの長に据えた。カブスにかけられている「山羊の呪い」を解くのに、彼ら以上のトリオはいないだろう。3人はボストン・レッドソックスでともに働き、彼らが作ったチームは「バンビーノの呪い」を打ち破った。

カブスは2014年まで5年続けて地区5位に終わった後、今シーズンは地区3位ながらワイルドカードを得て、7年ぶりにポストシーズンへ駒を進めた。このままリーグ優勝すれば70年ぶり、ワールドシリーズを制すれば107年ぶりの美酒となる。この4年間、エプスティーンら3人は精力的に動き、チームを作り上げてきた。今秋のポストシーズンのロースターには、そのことがよく示されている。

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リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)のロースター25人のうち、2011年のシーズンが終わる前――エプスティーンたちが就任する前――からカブスに在籍していた選手は、スターリン・カストロハビア・バイエズの2人しかいない。ロースターの92.0%にあたる23人は、エプスティーンたちが集めた選手だ。

この人数は、今年のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズに進出した他の3チームよりも、かなり多い。2011年のオフ以降に入団した選手は、ニューヨーク・メッツが13人(52.0%)、カンザスシティ・ロイヤルズが11人(44.0%)で、トロント・ブルージェイズは16人(64.0%)だ。3チームのなかで最も多いブルージェイズでも、カブスより7人少ない。カブスは2014年のオフに、タンパベイ・レイズの監督とベンチコーチだったジョー・マッドンデーブ・マルティネスも呼び寄せた。

カブスのロースターには、ジェイソン・ハメルのように、2011年のオフ以降に2度入団させた選手もいる。最初は、2013年のオフにボルティモア・オリオールズからFAになったハメルと1年契約。その5ヵ月後にジェフ・サマージャ(現シカゴ・ホワイトソックス)とともにオークランド・アスレティックスへ放出したが、オフに再び、今度は2年契約を交わした。また、昨年の夏にハメルとサマージャを手放した見返りとして、カブスは3人の若手を獲得した。そのうち、ダン・ストレイリーは今年1月に、デクスター・ファウラーの交換要員の一人としてヒューストン・アストロズへ移った。アディソン・ラッセルはディビジョン・シリーズ(地区シリーズ)第3戦で左太腿裏を痛め、続くシリーズではロースターから外れたが、本来なら遊撃手としてスターティング・ラインナップに名を連ねているはずだった。

カブスは今秋、ワイルドカード・ゲームでピッツバーグ・パイレーツを下し、ディビジョン・シリーズでは3勝1敗でセントルイス・カーディナルスを退けた。だが、メッツとのリーグ・チャンピオンシップ・シリーズは最初の2試合を落としている。今のところ、呪いを思わせるようなアクシデントは起きていないが、この秋に呪いを解くことはできないかもしれない。

それでも、エプスティーンたちの挑戦はこれで潰えたわけではない。カブスのロースターから今オフにFAになる選手のうち、ファウラー以外はいずれも、控え野手か中継ぎ投手だ。

もちろん、ここからメッツを倒してワールドシリーズへ進む可能性も残っている。思い出してほしい、レッドソックスが2004年に「バンビーノの呪い」を解いた時のことを。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの3試合が終わった時点で、レッドソックスはニューヨーク・ヤンキースに3敗を喫していた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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