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アトリーのスライディングは珍記録も生む? レギュラーシーズンより先にポストシーズンでメジャーデビュー

宇根夏樹ベースボール・ライター
チェイス・アトリーとルーベン・テハダ Oct 10, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

チェイス・アトリー(ロサンゼルス・ドジャース)のスライディングは、怪我を避けるためにルールを変更すべきかという論議を呼んでいる。ディビジョン・シリーズ(地区シリーズ)第2戦の7回裏、一塁走者のアトリーによるスライディングを受け、二塁ベース付近にいた遊撃手のルーベン・テハダ(ニューヨーク・メッツ)は右足を骨折した。

このプレーは、非常に珍しい記録も生むことになるかもしれない。それは、ポストシーズンでのメジャーデビューだ。

メッツはテハダに代え、マット・レイノルズをロースターに入れた。レイノルズは3年前のドラフトで、メッツから2巡目・全体71位指名を受けてプロ入りした。それ以来、まだ一度もメジャーリーグでプレーしていない。メジャーリーグで213試合に出場しているマット・レイノルズもいるが、こちらは左のリリーバーで、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに所属している。メッツのレイノルズは遊撃手だ。

レギュラーシーズンの試合に出場するよりも前に、ポストシーズンでプレーする!? 

前例はある。2006年のことだ。ディビジョン・シリーズを3勝0敗で制したオークランド・アスレティックスは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)のロースターからマーク・エリスを外し、メジャーデビュー前のマーク・カイガーを加えた。エリスはディビジョン・シリーズ第2戦に投球を右手に受け――死球ではなかった――人差し指を骨折。第3戦は欠場した。カイガーはリーグ・チャンピオンシップ・シリーズで打席に立つ機会こそなかったものの、第3戦の8回裏と第4戦の9回裏に1イニングずつ、二塁を守った(アスレティックスは0勝4敗で敗退した)。

メッツのレイノルズは、ディビジョン・シリーズの第3戦も第4戦も出場しなかった。しかし、第5戦もダグアウトにいたままでも、メッツが勝ち進めば、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズやワールドシリーズで出場するかもしれない。故障者の代替でなくとも、ロースターはシリーズごとに入れ替えられるが、遊撃というポジションからして、レイノルズが外される可能性は低い。そもそも、遊撃手だからこそ、レイノルズはロースターに加えられたのだ。もしかすると、ワールドシリーズでメジャーデビュー!! なんてことも起こり得る。

なお、カイガーは2007年以降も、レギュラーシーズンにメジャーリーグの試合に出ることはなく、2009年を最後にユニフォームを脱いだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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