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検証:ワイルドカードはポストシーズンで強いのか? 昨年のジャイアンツとロイヤルズがそうだったように

宇根夏樹ベースボール・ライター
マディソン・バンガーナ―(ジャイアンツ)OCTOBER 31, 2014(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ポストシーズン(プレーオフ)に出場するチームにワイルドカードが加わったのは、今から20年前、1995年のことだ。本来は1994年からそうなるはずだったが、この年はストライキによってレギュラーシーズンが途中で打ち切られ、ポストシーズンも開催されなかった。

2012年より、ワイルドカードはリーグ2チームに増え、そのうち、ワイルドカード・ゲームに勝った方がディビジョンシリーズ(地区シリーズ)に進むことになった。つまり、ワイルドカードを手にしたチームの半数は、1試合で姿を消す。地区優勝チームと比べ、ポストシーズンの道のりは険しくなっている。けれども、その後が3ラウンド――ディビジョンシリーズ、リーグ・チャンピオンシップシリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)、ワールドシリーズ――という点は変わっておらず、これは地区優勝であろうとワイルドカードであろうと同じだ。

過去2年のポストシーズンにおけるワイルドカードのチーム――ワイルドカード・ゲームに勝ったチーム――の歩みは、非常に対照的だった。昨年はワイルドカードのチームが揃ってリーグを制し、ワールドシリーズで対戦した。一昨年は両リーグとも、ワイルカードのチームはディビジョンシリーズで敗れ去った。

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では、1995年以降のポストシーズンで、ワイルドカードのチームはどのような結果を残してきたのだろうか。レギュラーシーズンでリーグ最高勝率を記録したチームと比較しつつ、過去20年のデータを紐解いてみた。

まず、ディビジョンシリーズを制してリーグ・チャンピオンシップシリーズに進んだワイルドカードのチームは、40チーム中21チームだった。一方、最高勝率のチームは、42チーム中25チームがリーグ・チャンピオンシップシリーズに進出している。ディビジョンシリーズに出場したチーム数(母体数)の差は、2チームが最高勝率で並んだ年が2度あるためだ。2001年のナ・リーグは、中地区のヒューストン・アストロズとセントルイス・カーディナルスが勝率.574(93勝69敗)で並び、直接対決で負け越していたカーディナルスがワイルドカードに回った。2007年のア・リーグは、東地区のボストン・レッドソックスと中地区のクリーブランド・インディアンスがともに勝率.593(96勝66敗)だった。

続いて、リーグ・チャンピオンシップシリーズを制してワールドシリーズへ進んだのは、ワイルドカードが出場21チーム中12チーム、最高勝率は25チーム中13チームだった。2007年のア・リーグは、最高勝率で並ぶ2チーム、レッドソックスとインディアンスがリーグ・チャンピオンシップシリーズで対戦しているので、一方が勝ってもう一方が敗れるこのカードを除くと、23チーム中12チームとなる。

そして、最後はワールドシリーズ。ワイルドカードは出場12チーム中6チームが優勝している。そのうち、2002年と2014年はワイルドカード同士が対戦しているので、この2カードを除くと、8チーム中4チームだ。最高勝率チームの優勝は、13チーム中7チームだった。ここから、最高勝率チーム同士が対戦した4カード(1995、1999、2005、2013年)を除くと、5チーム中3チームがワールドチャンピオンに輝いている。

これらをまとめると、ワイルドカードのチームと最高勝率チームがそれぞれのシリーズを制する確率は、表のようになる。

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ワイルドカードのチームと最高勝率チームの間に、際立った違いは認められない。多少のばらつきがあるのは、いずれも母体数が50チーム未満と少ないせいだろう。最高勝率チーム同士の対戦を除くワールドシリーズの優勝だけは60%台だが、この母体数は5チームに過ぎない。

もし、ワイルドカードのチームはポストシーズンで強いという印象を抱いていたのであれば、それは、ワイルドカードのチームが勝ち進めば地区優勝チームよりも注目を集めることや、ワイルドカードのチームが数年間続けて勝ち進んだ時期があったからではないだろうか。例えば、2002~07年は6年続けて、リーグ優勝の少なくとも一方が、ワイルドカードから勝ち上がったチームだった。

データが示しているのは、レギュラーシーズンで最高勝率を残しても、ワイルドカードでポストシーズンに出場しても、ディビジョンシリーズ以降を勝ち進む――あるいは敗退する――確率は変わらないということだ。

もっとも、地区優勝を逃したにもかかわらず、どのシリーズでも勝ち進む確率は最高勝率チームとほぼ同じという結果は、ワイルドカードのチームはポストシーズンで強いと見ることもできよう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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