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外野手が本塁打をアシスト! カンセコとは次元が違うけれど……。ベースボール版オウン・ゴール

宇根夏樹ベースボール・ライター
ベン・リビア(トロント・ブルージェイズ/中央)Aug 26, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

マット・ウィーターズ(ボルティモア・オリオールズ)が放った打球は、レフトのフェンス際でジャンプしたベン・リビア(トロント・ブルージェイズ)のグラブに当たって跳ね、フェンスの向こうへ消えた。

この本塁打は、9月4日にロジャース・センターで生まれた。過去にも、外野手に接触した本塁打はあった。4月28日には、センターを守っていたウィル・マイヤーズ(サンディエゴ・パドレス)が、エバン・ギャティス(ヒューストン・アストロズ)の打球をグラブと頭に当てている。

とはいえ、リビアのプレーは美技と紙一重だった。また、グラブと打球が接触したのは、高さ10フィート(約3.0m)のフェンス上端よりも少し下。さわっていなければ、本塁打ではなく、二塁打か三塁打になっていただろう。マイヤーズの場合は、グラブで弾いたボールが頭に当たったために本塁打となったが、そもそも、グラブが触れなければ本塁打だった。どちらも、ホゼ・カンセコのプレーとは次元が異なる。

1993年5月26日。カルロス・マルティネスの打球はカンセコの頭に当たって大きく弾み、フェンスを越えていった。リビアやマイヤーズのような、ジャンプしながらのプレーではなかったにもかかわらず、カンセコが掲げたグラブは、打球にかすりもしなかった(おまけに、カンセコはこの19年後、「4ベース・エラー・ヘッダー」と謳い、当時かぶっていた――と称する――キャップにサインを書き入れ、ネット・オークションにかけた)。

ただ、カンセコは本塁打王を2度獲得していて、通算本塁打は462本を数える。マイヤーズも長打力を備え持ち、ア・リーグの新人王に輝いた2013年は88試合で13本塁打を放ち、その前年にはマイナーリーグで37本塁打を打っている。一方、リビアはメジャーリーグ6年目、通算出場619試合にして、本塁打は3本に過ぎない(彼の初本塁打については「ベン・リビアがデビューから1466打数目の初本塁打。勝手な思いながら、スタンドに入ったのは少し残念」で書いた)。自身の本塁打に縁遠いリビアが、本塁打をアシストする羽目になったことは、少し気の毒にも思える。

願わくは、リビアの打球をアシストして、本塁打にしてくれる外野手が現れんことを。リビアが放った3本塁打のうち2本は、客席の最前列に飛び込んでいる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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