Yahoo!ニュース

マウンドには婚約者、バッター・ボックスには兄。しかも、どちらもオールスター選手という豪華さ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ゲリット・コール(ピッツバーグ・パイレーツ)Aug 22, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

8月22日、ゲリット・コール(ピッツバーグ・パイレーツ)が投じた95マイル(約152.9km)の速球は、ブランドン・クロフォード(サンフランシスコ・ジャイアンツ)のバットに捉えられ、レフトへ飛んでいった。そのままであればスタンドに入り、本塁打になっていただろう。しかし、打球はフェンスの手前でジャンプしたスターリング・マーテのグラブに収まった。そこから7イニング後、マーテはサヨナラ本塁打を放った。

マーテの本塁打キャッチ&サヨナラ本塁打もドラマだが、この試合には他に、愛情が絡んだドラマもあった。コールが大学時代から交際しているエイミーはクロフォードの妹で、7月半ばに婚約したばかり。この日も球場の客席には、エイミーとクロフォードの別の妹――クロフォードには妹が3人いる――の姿があった。

エイミーは姉妹が揃って写ったセルフィーとともに「私たちの兄を応援しているの!」とツイートしていたが、これは2人でいたからだろう。兄と将来の夫が対戦するのを、どんな気持ちで見守っていたのか。ジャイアンツのビート・ライターであるアンドルー・バッガリーは、2013年にコールがメジャーデビューする直前、こうツイートしていた。「ブランドンは言っていた。『彼女はハーフ&ハーフの帽子をかぶるんじゃないかな』」

ジャイアンツとパイレーツが半分ずつのキャップは見たことがないが、同じベイ・エリアに本拠を置くジャイアンツとオークランド・アスレティックスがハーフ&ハーフになったキャップは、地元で売っているのを目にしたことがある。

兄が将来の義弟と初めて対戦したのは、将来の義弟のメジャーデビュー戦で、この8月22日が4試合目だ。今のところ、12打席でシングル・ヒット2本、打点ゼロ、四球ゼロ、3三振。将来の義弟が兄を抑えている。

ブランドンは2006~08年にUCLAでプレーし、ジャイアンツからドラフト4巡目・全体117位指名を受けてプロ入りした。コールは2009~11年にUCLAで投げ、パイレーツから全体1位で指名されて入団した。2人とも、今夏はオールスター・ゲームに初めて選ばれた。ジャイアンツはナ・リーグ西地区、パイレーツはナ・リーグ中地区なので機会はそう多くないが、これからも2人の対戦は続いていくだろう。今秋のポストシーズンで顔を合わせる可能性もある。昨秋はワイルドカード・ゲームでジャイアンツとパイレーツがぶつかったが、コールは登板せず、ブランドンは満塁本塁打を放った。

ブランドンもコールも、伴侶と巡り合ったのは大学時代だ。ブランドンの妻ジェイリンは体操競技、コールの婚約者エイミーはソフトボールの選手だった。クロフォード夫妻には、2人の娘がいる。なお、ジェイリンの姉――ブランドンの義姉――ジェイミーは、2000年のシドニー・オリンピックで体操チームのメンバーとして、銅メダルを手にしている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事