Yahoo!ニュース

今さらかもしれないけれど連続無失点イニングの数え方。それと、よく似ているものの微妙に異なるストリーク

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザック・グレインキー(ロサンゼルス・ドジャース)Jul 26, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ザック・グレインキー(ロサンゼルス・ドジャース)の連続無失点イニングは、7月26日に45.2回で止まった。一方、グレインキーのチームメイト、クレイトン・カーショウは8月1日に8回を無失点に抑え、連続無失点イニングを37回に伸ばした。

グレインキーの連続無失点イニングは、6月18日の1回表から7月26日の2回裏までだった。ストリーク(連続記録)が始まる直前の6月13日は、8回裏2死から本塁打を打たれ、次の打者を討ち取るところまで投げた。ストリークが途切れた7月26日は、3回裏の無死一、三塁から内野ゴロで三塁走者が生還した。

6月13日の最後のアウトは、連続無失点イニングには含めない。7月26日の3回裏は無死から失点しているので当然だが、1死や2死からの失点だったとしても、ストリークはその前の2回裏までとなる。

グレインキーの連続無失点イニングに45.2回と端数が出ているのは、6月28日に8回裏2死でマウンドを降りているためだ。この時は塁上に走者はいなかったので、降板時にストリークの継続が確定したが、もし、走者を残して降板し、引き継いだ投手が生還を許してグレインキーに失点が記録されれば、ストリークはその前の7回裏で途切れていた。

1988年にオレル・ハーシュハイザーが59回連続無失点のメジャーリーグ記録を打ち立てた当時は、それまで記録を持っていたドン・ドライスデール(1968年)の連続無失点イニングを、現在のような58回ではなく、58.2回とする考え方も多く見られた。犠牲フライによってストリークが途切れた時点が2死だったので、0.2回をプラスするということだ。

蛇足ながら、まったくベースボールに疎い方――そういう方がこの記事を読んでくださるのはうれしい限りだが――のために説明しておくと、イニング(回)の端数は0.1回、0.2回ときて、0.3回ではなく1.0回(1回)に繰り上がる。3アウトでイニング(一方のチームの攻撃)が終わるからだ。この点では、1/3回、2/3回の方がわかりやすい。英語でも「45 2/3」や「58 2/3」のような、分数の表記は用いられている。

また、連続無失点イニングとよく似たストリークとして、連続無自責点イニングも存在する。こちらは、失点が非自責点であれば、ストリークは継続する。

例えば、ナックルボーラーのR.A.ディッキー(トロント・ブルージェイズ)は、ニューヨーク・メッツで投げていた2012年に、5月22日から6月24日にかけて、44.2回連続無自責点を記録した。ディッキーはその途中の6月13日に1失点しているが、これはエラーによって出塁した走者に生還されたもので、自責点はつかなかった。

グレインキーのストリークの途切れ方には、アンラッキーなところもあった。3回裏の先頭打者にぶつけたのはともかく、2人目に打たれたヒットはいい当たりではなかったし、センターを守っていたジョク・ピーダーソンのエラーがなければ、走者は二塁で止まっていた。また、内野ゴロを捕った一塁手のエイドリアン・ゴンザレスは本塁へ送球したが、タッチよりもホームインがわずかに早かった。とはいえ、失点と自責点が記録されることに疑問の余地はなく、グレインキーの連続無失点イニングと連続無自責点イニングは同時にストップした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事