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2015年のドラフト指名順位。アストロズは全体5位以内に指名権2つ、マリナーズは最高位が全体60位

宇根夏樹ベースボール・ライター

ドラフトまで、あと1ヵ月となった。ここで言う「ドラフト」とは「ファーストイヤー・プレーヤー・ドラフト」のことだ。他に「ルール4(フォー)・ドラフト」「アマチュア・ドラフト」と呼ぶこともある。主に大学生と高校生を対象とするドラフトで、今年は6月8~10日に開催される。

このドラフトの指名順位は、前年のレギュラーシーズンの勝率によって決まる。勝率が低い球団ほど早い順位の指名権を与えられ、今年はアリゾナ・ダイヤモンドバックスが全体1位の指名権を持つ。勝率が同じ場合は、前々年の勝率の低い球団が優先される。

とはいえ、他のルールと同じように、そこには例外がある。今年の指名順位は表のとおり。4巡目から最終ラウンドの40巡目までは勝率の低い順だが、3巡目が終わるまでには、その順番から抜けている球団と加わっている球団が、いくつも存在する。

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加わっている球団のうち、最も指名順位が高いのは、全体2位のヒューストン・アストロズだ。前年のドラフト1巡目あるいは2巡目で指名した選手と契約できなかった球団は、その指名順位よりも1つ下の指名権を与えられる。アストロズは2014年に全体1位で指名したブレイディ・エイケンと契約できず、この指名権を得た。ワシントン・ナショナルズが持つ全体58位の指名権も、同じ理由によるものだ。また、3巡目指名の選手と契約できなかった場合は、3巡目補完の指名権を得る。今年の指名権では、セントルイス・カーディナルスの全体105位がこれに該当する。

ちなみに、エイケンは錦織圭も拠点としているフロリダ州のIMGアカデミーで投げていて、2年続けてドラフト全体1位となる可能性もあったが、左肘を故障し、3月下旬にトミー・ジョン手術を受けた。そのため、指名は来年のドラフトまで見送られそうな気配だ。今年のドラフトで指名する球団が出てくるにしても、全体1位ということはないだろう。

続いて、全体3位以降の指名順位を見ていくと、全体13位のところでサンディエゴ・パドレスが抜けている(4~40巡目の並び順と比べるとわかりやすい)。オフにジェームズ・シールズと契約したためだ。FAとなったシールズは、それまで所属していたカンザスシティ・ロイヤルズからクオリファイング・オファーを申し出られた。クオリファイング・オファーは1年契約で、年俸は上位125選手の平均となる(2014年は1530万ドル)。この申し出をされた選手と契約した球団は、持っている最も高順位のドラフト指名権を失う。1巡目ではパドレスの他に、ニューヨーク・メッツ(マイケル・カダイヤー)、トロント・ブルージェイズ(ラッセル・マーティン)、シアトル・マリナーズ(ネルソン・クルーズ)、ナショナルズ(マックス・シャーザー)が指名権を喪失した。

ただ、選手と契約した代償に失う指名権は全体11位以降に限られていて、全体1~10位は保護される。ボストン・レッドソックスの場合、オフに契約したパブロ・サンドバルハンリー・ラミレスも、それまで所属していた球団からクオリファイング・オファーを申し出られていたが、レッドソックスの全体7位の指名権は保護されるので、失ったのは2巡目と2巡目補完の指名権だった。レッドソックスと同じく、シカゴ・ホワイトソックス(デビッド・ロバートソンメルキー・カブレラ)とミネソタ・ツインズ(アービン・サンタナ)も、1巡目の指名権はキープしていて、ホワイトソックスは2巡目と3巡目、ツインズは2巡目の指名権を失った。

一方、ロイヤルズからシールズが去っていったように、クオリファイング・オファーを申し出た選手が退団した場合、その球団は補完の指名権を手にする。全体27~36位の指名権は、これによって得られたものだ。なお、クオリファイング・オファーをされた選手の動きに伴う指名権の喪失と発生は、譲渡ではない。

また、全体37~42位と全体71~75位の指名権は、前年7月に行われた戦力均衡ロッタリーでそれぞれ得たものだ。これらの指名権はトレードすることができ、アストロズは7月末にジャレッド・コザートら3選手をマイアミ・マーリンズへトレードした際、その交換として、3選手とともに全体37位の指名権を手に入れた。他には、全体41位、74位、75位の指名権もトレードされた(いずれの順位もトレード時点では未確定)。レッドソックスが失った2巡目補完の指名権も、7月末にジョン・レスターら(現シカゴ・カブス)をトレードした時に、オークランド・アスレティックスから得たものだ。

これらの動きによって、アストロズ(全体2位、5位、37位)、コロラド・ロッキーズ(全体3位、27位、38位)、アトランタ・ブレーブス(全体14位、28位、41位)の3球団は、補完を含めた1巡目指名権を3つずつ持ってドラフトに臨む。それに対し、4球団は1巡目指名権をまったく持っておらず、それぞれの最高位は、パドレスが全体51位、メッツが全体53位、ナショナルズが全体58位、そして、マリナーズは全体60位だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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