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スタッツから見る黒田博樹のメジャーリーグ7年間(2008~14年)

宇根夏樹ベースボール・ライター

黒田博樹(広島東洋カープ)が2008~14年にメジャーリーグで残した数値は、同時期の他の投手たちと比べてどのあたりに位置するのか。検証してみた。

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■先発試合・投球回

通算先発211試合は2008年~14年の全投手中17位、1319.0イニングは19位。この7年間の最多先発はジャスティン・バーランダー(デトロイト・タイガース)の234試合、最多投球回はフェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)の1595.0イニングだった。シーズン30先発以上が6度以上は19人、シーズン180イニング以上が6度以上は15人で、どちらも6度以上ずつクリアしている投手は、黒田を含めて13人いた。なお、バーランダーとフェリックスをはじめ、13人中7人は7年とも30先発と180イニングをクリアしている。

■防御率・FIP

通算防御率3.45は14位、FIP3.61は17位(2008年~14年に1000イニング以上の56投手中)。この7年間のベストはどちらもクレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)で2.48と2.73、ワーストは防御率がケビン・コレイアの4.74、FIPはジェレミー・ガスリー(現カンザスシティ・ロイヤルズ)の4.70だった。シーズン防御率4.00未満(162.0イニング以上)が6度以上は7人、シーズンFIP4.00未満が6度以上は10人。黒田を含めた前者の7人は後者もクリアしている。7年とも防御率もFIPも4.00未満はフェリックスだけ。カーショウは2008年に107.2イニングしか投げておらず、この年は防御率もFIPも4.00以上だった。

■奪三振率・与四球率・K/BB

通算奪三振率6.73は40位、与四球率1.99は4位、K/BB(奪三振/与四球)3.38は14位。ベストは奪三振率がマックス・シャーザー(現ワシントン・ナショナルズ)の9.59、与四球率とK/BBはクリフ・リー(現フィラデルフィア・フィリーズ)の1.33と6.10で、ワーストは奪三振率がジョー・ソーンダースの5.01、与四球率がウバルド・ヒメネス(現ボルティモア・オリオールズ)の4.19、K/BBはトレバー・ケイヒル(現アリゾナ・ダイヤモンドバックス)の1.75だった。シーズン奪三振率7.30未満が6度以上は5人、シーズン与四球率2.30未満が6度以上は4人いて、マーク・バーリー(現トロント・ブルージェイズ)と黒田はどちらにも該当した。シーズンK/BB2.70以上が6度以上は黒田を含め7人。

■ゴロ率(Fangraphsのデータより)

通算ゴロ率48.6%は10位。ティム・ハドソン(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)の57.8%が最も高く、ジェレッド・ウィーバー(ロサンゼルス・エンジェルス)の33.1%が最も低かった。シーズンゴロ率43.0%以上が6度以上は黒田ら9人。フェリックスは7年とも48.0%以上だった。

■その他

通算WHIP1.17は11位。79勝は27位タイ、79敗は6位タイの多さだった。WHIPのベストはカーショウの1.06、ワーストはコレイアの1.42。勝敗はバーランダーの117勝とガスリーの95敗がそれぞれ最も多かった。

■総括

通算の先発試合、投球回、防御率、FIPはいずれも14~19位に入っている。奪三振率こそ低めながら、与四球率が示すように制球良く投げて多くのゴロを打たせ、シーズンごとの数値も非常に安定しているので、これら通算の順位が黒田のランクを示していると考えても、ほぼ差し支えないだろう。つまり、フェリックスやカーショウのような大エースとまではいかないものの、単なるローテーション投手ではなく、ローテーションの1番手あるいは少なくとも2番手クラスだったということだ。

■おまけ

PITCHf/xのデータによれば、通算の投球間隔23.7秒はCC・サバシア(現ニューヨーク・ヤンキース)と並び、4番目の長さ。最長はジョシュ・ベケットの25.1秒、最短はバーリーの16.8秒だった。ちなみに、2014年は日本人投手が2人、長い方のトップ10にランクインした。黒田が6位の25.2秒、岩隈久志(マリナーズ)は9位の24.7秒で、規定投球回未満ながら田中将大(ヤンキース)とダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)も25.1秒と長かった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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