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モラレスを呼び戻しただけではマリナーズのポストシーズン進出は実現しない!?

宇根夏樹ベースボール・ライター

ケンドリス・モラレスがシアトル・マリナーズへ帰ってきた。

7月24日のトレードでミネソタ・ツインズから移ったモラレスは、その翌日、マリナーズのスターティング・ラインナップに名を連ね、背番号こそ2013年の「8」から「21」に変わったものの、前年と同様に「4番DH」に座り、6回裏には犠牲フライを放った。この日、マリナーズの得点はこの1点のみだった。

モラレスは2012年12月に、トレードによってロサンゼルス・エンジェルスからマリナーズに加わり、2013年はチーム2位の23本塁打とOPS.785、最多の34二塁打と80打点を記録した。そして、オフにFAとなると、マリナーズが申し出た1410万ドルのクオリファイング・オファーを蹴り、市場に打って出た。

だが、モラレスはどの球団とも契約できないまま、開幕を迎えた。興味を示した球団はあったが、やはり、クオリファイング・オファーがネックとなった(そのあたりの事情については、以前にこのページで書いた)。

6月8日、ドラフトが終わり、クオリファイング・オファーの縛りが消滅したところで、ミネソタ・ツインズがモラレスと契約を交わした。年俸はクオリファイング・オファーとほぼ同額の1400万ドル1200万ドル(2014年11月16日・訂正)ながら、すでにシーズンは半分近く過ぎているため、モラレスが実際に手にするのは740万9836ドルということになった。

ツインズはモラレスが入団した時点でも勝率.500を切っていた。とはいえ、その後の急降下がなければ、モラレスを手放さずにいたはずだ。まさか、若手を獲得するためのトレード要員として、モラレスを手に入れたわけではあるまい。

一方、マリナーズはここまで予想外の健闘をしているが、得点力は低い。打線には左打者が多いこともあって、右のスラッガーを欲していた。スイッチヒッターのモラレスはその条件に合致する。前年の成績とともに、7月上旬にホームで行ったツインズとの4連戦で、モラレスがブーイングを浴びながら、3試合続けて二塁打を打ち、計5打点を挙げたことが決め手となったのかもしれない。

ただ、モラレスはツインズで39試合に出場して、11本の二塁打は打っているものの、本塁打は1本しかなく、OPSは.584に過ぎない。もともと平均未満の四球率も3.7%と落ち込んでいる。サンプル数が少なく、6月まで実戦から遠ざかっていたことも考えると即断はできないが、今後、前年のように打てるかどうかには不安が残る。

マリナーズとしても、打線の補強はモラレスで完了したとは考えていないようだ。デンバー・ポスト紙のニック・グロークは「マリナーズがドルー・スタッブスのトレードをコロラド・ロッキーズに打診」と7月24日に報じている。マリナーズはマーロン・バード(フィラデルフィア・フィリーズ)にも目をつけているらしい。2人とも右打ちの外野手で、スタッブスは259打席で10本塁打&OPS.841、バードは427打席で19本塁打&OPS.801(7月25日時点)と好成績を残している。

いずれにせよ、獲得は簡単にはいかない。スタッブスを得るためには、モラレスの見返りに差し出したスティーブン・プライアー以上の投手が必要になるだろう。また、バードの契約には「トレードを拒否できる4球団」があり、そこにはマリナーズが含まれている。スタッブスはクアーズ・フィールドで8本塁打という点も気がかりだ。

けれども、モラレスだけでは心許ない。デビッド・プライス(タンパベイ・レイズ)を加えて、「キング&クマ」――フェリックス・ヘルナンデスと岩隈久志――との三本柱によって13年ぶりのポストシーズン返り咲きを狙うにしても、打線にもう一押しが必要ではないだろうか。そんな気がしてならない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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