「新型コロナで経営危機」のMLB老舗ブランド「ルイビル・スラッガー」とは?

その経営状況は深刻なようだ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

新型コロナウィルス感染症の蔓延で「ルイビル・スラッガー」のメーカーも経営危機に陥っているようだ。その本社博物館を訪れたことがあるのでとても心配だ。

世界で猛威をふるう新型コロナウィルス感染症。その蔓延の影響は野球関連企業にも及んでいる。「ルイビル・スラッガー」のメーカーも経営危機に陥っているようだ。すでに内外のメディアが報じている。

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ぼくも、2016年にここを訪れたことがあるので、今回のニュースには驚かされ、心から心配している。

ルイビル・スラッガーは19世紀からの歴史を誇る老舗ブランドだ。実は、社名は「ヒラリッチ&ブラズビー・カンパニー」(以下H&B)。「ルイビル・スラッガー」は商標だ。ルイビルの綴りはLouisvilleのため、ぼくが子供の頃は、多くの野球ファンは「ルイスビル」と発音していた。当時は大リーガーのバットというと、ルイビル・スラッガーかローリングスのアディロンダックと相場が決まっていた。

H&Bの所在地はその商標通りケンタッキー州のルイビルだ。ダウンタウンの中心にあり、ルイビル・スラッガー博物館を併設している。

グレイハウンドバスのデポから徒歩10分くらい。徒歩圏には、3Aのルイビル・バッツ(チーム名BATSは、コウモリのBATと野球のBATをかけている)の本拠地ルイビル・スラッガー・スタジアム(H&Bは命名権オーナーでもあるのだ)や、ルイビル出身でボクシングの伝説的ヘビー級チャンピオンであるモハメド・アリに関するミュージアムがある。この3つは、ルイビルダウンタウン訪問の際のオススメセットだ。

ちなみに、ぼくが訪れた日はバッツはアウェイだったので、午後4時くらいのバスでシンシナティ(約2時間だ)に渡り、レッズのナイトゲームを観戦した。こんなことも可能だ。

ルイビル・スラッガー・スタジアム前には同市出身のブルックリン・ドジャースの名遊撃手ピー・ウィー・リースの銅像がある。

映画「42」にも出てくるピー・ウィー・リース
映画「42」にも出てくるピー・ウィー・リース

ルイビルのあるケンタッキー州は南北戦争前は奴隷州だった。そのため、長い間人種的偏見が強く、リースもジャッキー・ロビンソンの入団には当初抵抗を示したが、その後2人の間には友情が生まれた、と言われている。

街中にこんなものも見つけた。やはり、リースは街の誇りなのだ。

リースとジャッキー・ロビンソンのビルボード
リースとジャッキー・ロビンソンのビルボード

H&B本社工場兼ルイビル・スラッガー博物館の正面には、世界一巨大なバットが飾られている。触って確認したが、木製ではない。当たり前か。

巨大なバットが目印なのですぐ分かる
巨大なバットが目印なのですぐ分かる

ちなみにH&B社はもともとテーブルの脚なんか作っていたらしい。1883年に、同社が作ったバットで地元球団のピート・ブラウニングという選手が猛打を振るったことが、ブランド名の由来だ。ちなみにブラウニングは通算打率.341を記録しているが、精神を病んで死んだと言われている。

「ルイビル・スラッガー」の由来が紹介されている
「ルイビル・スラッガー」の由来が紹介されている

有料のツアーで工場と博物館を見学した際に知ったのだが、ルイビル・スラッガーにはこだわりのCI基準がある。彼らがメジャーリーガーに提供するバットには、選手名が刻印されているのだが、それには署名タイプとブロック体タイプがある。専属契約を結んでいる選手にはサインを登録してもらい、バットにもその刻印を入れることになっているが、そうではない選手のバットには、名前をブロック体で入れることにしていると言う。

上のミッキー・マントルは署名で、下のアルバート・プーホルスはブロック体だ
上のミッキー・マントルは署名で、下のアルバート・プーホルスはブロック体だ

ここの博物館で他にも面白かった点がいくつかある。

当然、過去および現役の選手たちのバットがずらりと展示されていたのだが、ロッド・カルーやトニー・グウィンらの殿堂入り大スターと、AJ・ポラック(知ってます?)のようなまあソコソコの選手が平等に扱われているのだ。

古今の名選手愛用のバット
古今の名選手愛用のバット

また、ベーブ・ルース、ジャッキー・ロビンソン、デレク・ジーター、テッド・ウィリアムズらのリアルな実物大人形が展示されているフロアもあったのだが、これらの人形は造りが非常にリアルで、肌は柔らかくギュっと押すと指が沈み込んだ。感心したが不気味でもあった。

ロビンソンの人形に触れてみると、肌がリアルに柔らかかった
ロビンソンの人形に触れてみると、肌がリアルに柔らかかった

H&Bはメジャーの開幕延期等で需要が激減。状況は極めて深刻のようだ。そのブランド力は絶対なので、仮に倒産してもどこかの資本が買い取り商標は残ると思うが、叶うことならオリジナルの姿で存続して欲しい。

文中の写真は全て2016年豊浦彰太郎撮影