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「ちょっとマイアミ行ってくる」侍ジャパンだけではないWBCを見届けに

豊浦彰太郎Baseball Writer
決勝ラウンドの舞台はローンデポ・パークだ。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ちょっとマイアミ行ってくる。19日の日曜日発で現地3泊。もちろん、WBCの観戦だ。

侍ジャパンにはがんばってもらいたいのだけれど、目的はそれだけではない。WBCは、2006年の第1回大会で東京開催の全試合を球場で観戦し、第2回以降は全てアメリカでの決勝ラウンドにも足を運んでいる。2017年の前回大会では、韓国ソウルでも観戦した。WBCに関しては、ここまでの成長と迷走の歴史をそれなりに見届けてきた自負があるのだ。

今回、日本での盛り上がりはものすごい。もはや国民的行事で、サッカーワールドカップ並みかそれ以上だ。アメリカでもそれなりに注目度は上がっているようだ。しかし、WBC全体のここまでの道のりは決して平坦ではなかった。いや、それどころかスター選手にソッポを向かれ、球団には派遣を渋られ、(日本以外では)メディアからは軽視され続けた黒歴史だ。

2009年の第2回大会での渡米時は、第2ラウンド開催のサンディエゴに到着し空港からタクシーに乗ると、ドライバー氏は「へえ、そんなのやってるんスか」という反応でガッカリさせられた。球場もガラガラだった。係のおじさんは、二階席の観客をテレビカメラに映る1階ダグアウト後方のエリアにタダで移動させる始末。一番高い席を買っていたぼくは狼狽するしかなかった。

当時は、まだ紙の新聞が一般的だったが、全国紙もサンディエゴやLAの地元紙も、スポーツページは、その時期たけなわのスプリングトレーニング(日本流に言えばキャンプのオープン戦)に大きなスペースを割り当て、WBCはボックススコアの紹介のみで記事はほぼなし、というトホホな扱いだった。

サンフランシスコで開催された2013年の決勝ラウンドでは、前日から、大量に売れ残ったチケットの叩き売りがMLBの公式サイトで展開された。数ヶ月前の発売開始時に正価でかなり高い席を購入したぼくは「なんちゅ〜ことしてくれんねん!」と怒りすら覚えた。

2017年の前回大会でも、アメリカは優勝したが、ジム・リーランド監督は勝敗よりも各球団から預かった選手たちに公平な出場機会を与えることを優先しているかのような起用を続けていたし、ドジャー・スタジアムに詰めかけた観客も「ワールドカップ」というより、壮大なエキシビジョンを楽しむ、という雰囲気だった。

ぼくはこれまでにWBCにはそれなりに散財してきた。サッカーW杯に比べるとインチキ臭い側面も否めないのにモノ好きね、という憐憫とも軽蔑とも取れる視線を周囲から浴びた。でもぼくは、真の野球世界一決定戦のみを観たいわけではなく、WBCのいびつな部分も含めて関心をそそられたのだ。

今回も、4つのプールでの出場国・地域の配分は公平度を欠くし、決勝ラウンド寸前になって、アメリカ対侍ジャパンが実現するなら決勝戦になるよう組み合わせが変更された点もどうかと思う。ちょっと堅苦しいことを言えば、ビジネスとしては成長してきたのだけれど、ベースボールの世界への普及というような崇高なミッションの観点からはまだまだ課題は多いと思う。まっ、それも含めWBCの見ておくべき点だと思っている。だから今回も行ってくる。それではみなさん、行ってきます。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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