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MLB殿堂入り投票「B・ボンズは今回も落選だが、将来は別ルートで可能性あり?」

豊浦彰太郎Baseball Writer
2007年 ボンズはH・アーロンの記録を更新する756号を放った(写真:ロイター/アフロ)

全米野球記者協会の野球殿堂入り投票では、バリー・ボンズは今回も票を伸ばせなかった。残るチャンスは2度で、もう難しいかもしれないが、将来別ルートで選出の可能性はある。

8度目もダメだった

現地時間1月21日、全米野球記者協会(BBWAA)選出の今年の野球殿堂入り投票結果が発表された。引退後5年を経て今回初めて資格を得た元ヤンキースのキャプテン、デレク・ジーターは予想通り選出されたものの、1票不足で昨年のマリアーノ・リベラに次ぐ史上2人目の満票とはならなかったのが最大のニュースで、8年目のバリー・ボンズは前年からわずか1.6ポイントアップの60.7%に止まり、今年も規定の75%には届かなかった。2017年に、最終的な殿堂入りのボーダーライン(後述)とされる得票率50%台に乗せたが、そこからは足踏み状態と言って良いだろう。

野球殿堂入り投票での資格保有期間は最大10年間で、ボンズに残されたチャンスはあと2度だ。今後のBBWAA投票での彼の行末を、単純に第三者的視点で「予想」するならNGということになる。しかし、それで良いのかどうかは話が別である。「ボンズは殿堂入りすべきである」とする理由はそれなりにある。

「疑惑組」の中にはすでに殿堂入りも

まずは公平性だ。「ボンズに扉を開くべからず」と主張する元選手、ジャーナリストやファンの理由は「薬物使用者だから」ということになるのだが、この点に関しては彼は「限りなくクロに近いグレイ」だ。ぼく自身も、彼の能力向上を目的とした意図的な薬物使用は、諸々の状況証拠から99.99%間違いないと思っているが、実際には薬物検査で陽性反応を示したことはない(検査の導入自体が彼のキャリア終盤期の2003年だが)。

ウワサだけで証拠はない、という点ではマイク・ピアッツア(2016年殿堂入り)、ジェフ・バグウェル&イバン・ロドリゲス(2017年殿堂入り)も同様だ。違いがあるとすれば、「グレイの濃さ」だ。そこに明確な線引きは難しい、というか無理だ。過去から今回までの選出結果でも、検査での陽性反応の有無で分ける、等の基準はない。まあ、約400名の記者による投票であり、コンセンサス形成を目的とする合議制とは異なるので、この状況自体を非難することはできないが。

薬物使用?以前から十分な実績

もうひとつの理由は、ステロイド使用のウワサが出る前からボンズはすでに殿堂入りに充分すぎるほどの実績を残していた、ということだ。彼は、1998年オフから文字通りの「肉体改造」に取り組み、体格だけでなくそれこそキャップやシューズのサイズまで大きくなったとも言われているが、それ以前の1998年終了時点で、通算411本塁打、445盗塁、99.9WAR、ゴールドグラブ受賞8度、MVP受賞3度なのだ。正にスーパーオールラウンドプレーヤーだ。したがって、「通算762本塁打等の超人的な記録は薬物の力を借りたものだから殿堂入りには値しない」という理屈は通用しないのだ。ここに挙げた2つの理由は、ボンズだけでなく、通算354勝&サイ・ヤング7度受賞のロジャー・クレメンスにもそのまま当てはまる。

同じグレイ組のピアッツアらとの扱いの差を挙げるまでもなく、ボンズは薬物時代の負の象徴として割りを食っていることは事実だと思う。あの時代のクスリまみれ状態は、何もボンズやロジャー・クレメンスらのみの責任ではなく、その蔓延に警鐘を鳴らさなかったメディア、本塁打が乱れ飛ぶ状況にファンが熱狂するのを見て対策を怠った当時のバド・シーリグ・コミッショナーを始めとするMLB機構、選手擁護の立場から検査導入に抵抗した選手組合、みんなに責任がある。そもそも、ボンズが超人的なパフォーマンスを見せていたのは2004年までだが、その年になってようやくユルユルの罰則規定が導入されたのだ。そういう環境下でありながら、当時の最高責任者のシーリグは、退位間もない2017年に別ルートの時代委員会経由で選出(BBWAA経由で資格を失った選手や監督、審判、経営者を対象とする)されているのは不条理な印象は拭えない。

時代委員会での復活の可能性

では、ボンズはこのまま永遠に殿堂から排除され続けるのか?というとそうでもないと思う。実は、過去BBWAAでの殿堂入り投票で50%以上の票を一度でも得て、最終的に殿堂入りできなかったのはギル・ホッジス(ブルックリン時代のドジャースの強打者で、1969年のミラクル・メッツの監督)1人しかいない。ホッジス以外は、BBWAA投票であれ、時代委員会(昔の名称はベテランズ委員会)経由であれ、最後は殿堂入りしているのだ。

近年、時代委員会は、BBWAA経由でNGの烙印を押された候補者を安易にハードルを下げて入れすぎていると思う。2018年のジャック・モリスや翌年のリー・スミスとハロルド・ベインズなどが好例だ。時代委員会は、あくまで経年による歴史観や選手の実績に対する評価軸の変化を考慮し、かつては低く評価されていた選手の本当の価値を発掘することに専念すべきだ。BBWAAで規定の年数を経ても十分な票を得られなかった選手をその数年後にあっさり拾い上げては、単なる敗者救済機関でしかない。

しかし、ボンズやクレメンスのような評価の分かれる薬物疑惑者に対しては、それこそ後年この時代を振り返り、ここで記したような要素を踏まえ殿堂入りを時代委員会に諮ることは大いに意義がある。それが5年後か、数十年後かは別にして。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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