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MLBワンポイント禁止の「打者3人ルール」は有効なCMタイム削減策

豊浦彰太郎Baseball Writer
「打者3人」だけでなく投手交代時以外のマウンドビジットも禁止してはどうか

MLBは11日に来季からの新ルールを発表した。その中には、「ワンポイントリリーフ禁止」も含まれておりこれには異論もあるようだが、ぼくは賛成だ。

このルールは、正確には「投手は最低でも打者3人に対して投球を完了するか、イニング終了とならない限り交代はできない」というものだ(負傷時は例外)。実はこのルールは今季開幕前に2020年シーズンからの導入が決まっており、「ロボット審判」や「一塁盗塁」などと同様に、今季から3年間契約で各種の新ルール実験を進めている独立リーグのアトランティック・リーグでのメニューに含まれている。

MLBの試合時間は伸びる一方だ。2019年は9イニング試合では平均3時間5分で、史上最長だった。この20年間で約10分伸び、第二次大戦後に1時間も長くなった。それはそうだと思う。放置しておけば、試合時間は長くなるものだ。選手の交代、特に投手交代が多くなり、バッテリー間のサインの交換も複雑化した。統計データが行き届くようになったため、ベンチからのサインも増えた。それこそ1球ごとにベンチの指示で野手は守備位置を変える。場内の演出も進み、打者交代のたびに流れるテーマソングも時短の阻害要因になっていると思う。

要するに、試合時間が長くなることは、戦術の進化、エンタメ性の増大とセットになっているのだ。したがって、時短策は常に講じられねばならない。

今回の「打者3人」への反対意見として、左打者専用のリリーフ投手、いわゆるシチュエーショナル・レフティなどの個性的な選手が活躍の場を失ってしまう、というのがある。そんなことより攻守交代時のCMタイムなどを削減する方が先でしょ、というものだ。ある程度はぼくも賛成だ。しかし、だからこそ、「打者3人ルール」は支持したいと思う。

野球の時短策を検討する際には、その効果とこの競技の本質への影響度の観点から着手するエリアに優先順位を付けることが重要だと思う。ぼくなりにはこうなる。

1. 攻守交代時のなどの完全アイドリングタイム(CMタイムと言い換えても良い)

2. ボールデッドタイム(ファウル打球や死球後のプレー再開前、チャレンジ中など)

3. ボールデッド状態ではないが、インプレー中のインターバルタイム(投球間隔、打者交代時間など)

4. インプレータイム(かつての“リアル”敬遠四球など)

ゲームの本質に影響を与えない、違う競技にしてしまわない、という観点からは上記の1. から順番に着手すべきだと思う。その意味では、申告敬遠はいきなりインプレー中の所作に手を付けてしまったということ、その時短効果自体は微々たるものだということで、褒められたものではなかった。効果だけ捉えると、投球インターバルは真っ先に対象になるが、基本的にはインプレー中だ。ピッチクロックやタイムオーバー時の罰則の導入には慎重を期す必要がある。

よって、効果の面でも、野球を別のスポーツにしてしまわない、という点でも攻守交代時のCMタイムを劇的に削減するのがベストなのだが、MLBもビジネスである以上、このエリアにドラスティックに手を入れるのはほとんど不可能だ。現在、2分5秒のCMタイムを1分30秒にできれば素晴らしいが、そうなると現在のMLBビジネスの根幹を成すテレビ放映権料を維持できなくなる。いや、それ以前に各球団とも地元放送局と長期放映権契約を結んでいる。したがって、実施しようと努めてもそれは不可能だ。

もっとも、攻守交代時間を短縮することはできず、野球を7イニングスのスポーツにしてしまうこともできないが、CMタイムを確実に減らす方法がある。それが、投手交代の制限だ。

ぼくは、日本の1億2500万人をMLBが好きな順にランク付けしたら、相当上位(100位以内?)に入る自信?があるが、そのぼくでさえ近年のMLBでのゲーム終盤での目まぐるしい投手交代にはウンザリさせられる。それはもっとストレートに言うと、投手が変わるのがイヤなのではない。また、CMタイムという完全ノンアクションのアイドリング時間に入るのかと、暗澹たる気分になってしまうのだ。

「打者3人ルール」は、確かに一部の投手の活躍の場を制限してしまうが、それ以上に CM削減効果が期待できる。いや、左打者1人にしか投げられない投手なら見れなくなっても良いかな、とすら思う。

MLBを見ていると、こんな場面に遭遇することがよくある。6回を投げ終えた右腕の先発投手がタマ数も100球に近づいており「これでお役御免かな」と思っていると、7回も引き続きマウンドに上がる。「おう、続投か」と思っていると、最初の打者を抑えたところで監督がおもむろにベンチから出てきて投手交代を告げる。次打者が左打ちなので、ここで左投手を投入する、というのだ。ぼくはこんな交代を排除したい。投手交代はなるべくイニングの頭にして、余計な時間は削減したい。それこそ、「打者3人」だけではなく、イニング途中の投手交代回数に制限を加えても良いと思う。

このことの影響は基本的に戦術面であり、野球の本質は何も変わらない。時短にはCMタイムの削減が最も望ましい。しかし、現実的には攻守交代時のCMタイム短縮はほぼ不可能だ。しかし、別のところにCM削除策があるのだ。それがイニング途中の投手交代の規制なのだ。

写真は豊浦彰太郎撮影

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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