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ヤンキース田中将大、復活の要因はスプリッターの握りの変更?

豊浦彰太郎Baseball Writer
スプリッターの握りであること、指を縫い目に沿わせていることが分かる。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

一時はメッタ打ちに遭っていた田中将大だが、ここ1ヶ月は安定した投球を続けている。復調の要因としては、決め球のスプリッターの握りを変えたことにあるという。しかし、「握り」を超えた根本的な理由もありそうだ。

現地時間9月2日のヤンキース対レンジャーズ戦をMLBTVで観戦した。このゲームに対する個人的な最大の関心事は、ヤンキースの先発田中将大のスプリッターのキレだった。8月以降安定した投球続けている田中だが、その要因はスプリッターが威力を取り戻したことで、それは握りを変えたことが大きく影響しているという。

結局この日は6回を投げ本塁打1本を含む7安打を許したが、与四球2、奪三振5で2失点に抑えた。味方打線は今季初(昨年6月30日以来)の完封を喫したため田中に8敗目(10勝)が付いたが、先発投手としての責任は果たしたと言えよう。

今季はここまで山あり谷ありだった。6月29日のレッドソックス戦(メジャー初の欧州での公式戦としてロンドンで開催された)では、1回すら持たず8失点、7月25日のボストンでのマッチアップでは自身ワーストの12失点という信じられないような乱調登板もあった。しかし、その後持ち直した。ここ5先発中クオリティ・スタート4度と安定感を見せてきた。

復調の要因は、彼の最大の武器であるスプリッターの「握り」だったと複数の現地メディアが伝えている。

今季のメジャーリーグは、史上最高のホームランブームだ。ミネソタ・ツインズがシーズンを1カ月も残した段階で、年間の最多本塁打記録を更新したことはその象徴的な出来事だった。

ホームラン乱発の原因としては使用球が槍玉に挙がっている。MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは断固否定するが、多くのメディアや選手が「今年の公式球は違う」と語っている(田中もその1人だ)。今季からMLB公式球を使用し始めた3Aでも本塁打数が激増している。ボールが変化している可能性と、そのことと本塁打増に因果関係がある可能性は極めて高いと思う。

スポーツ専門のサブスクリプションサイトThe Athleticは、今年6月に物理学者の実験結果を用い、今季の公式球は縫い目が低く表皮の凹凸が少ないと報道した。田中のスプリッターもその影響を受けていた。指への引っかかりが少なくなったためか、スプリッターの縦方向の変化が、今季は昨季に比べ約2.4インチ(約6.1センチ)も少なかったという。結果的にこの球種で空振りを取れる率も今季は著しく低下していたようだ。

田中自身はスプリッターのキレを取り戻すべく主としてメカニクス(日本でいうフォームのこと)の修正に取り組んでいたが、最終的に「握り」の変更に至った。従来は、人差し指と中指を縫い目に沿ってあてがっていたが、それを二本の指が縫い目にクロスするように変えたらしい。そして、その効果はてきめんだったということだろう。

しかし、2日のレンジャーズ戦での登板を観た感想としては、「外紙が報道するほどスプリッターは落ちていないなあ」というものだった(田中の登板試合の観戦は約1ヶ月ぶりだ。そして、あくまで個人の印象だ)。その結果が、冒頭記したように、毎回のように走者を背負いながらなんとか凌ぐという投球だった。

少々拍子抜けしたところで、本記事用の写真を検索していて驚いた。ここに掲載した写真はまさしくこの日の登板の写真だが、スプリッターの握りであり、指を縫い目に沿わせている。これは「モデルチェンジ前」のスタイルだ。

この日はスプリッターを投じるにあたり、全て「旧型」の握りであったかどうかは定かではない。しかし、これだけは言える。田中は「上手くいったからそれで通す」ということではなく、試行錯誤を続けているということだ。これは彼の探究心、向上心の現れとも言える。復活の直接的な理由は握りの変更だったかもしれないが、根本的な要因は、そのあくなき探究心なのかも知れない。メジャーデビュー以来6年連続2ケタ勝利を記録できたのもその賜物だろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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