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ソフトバンク入りスチュワート、成功のカギは異文化への適応「日本は10分前集合」を理解できるか?

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

カーター・スチュワートの日本での成功のカギは全くの異文化への適応だろう。体育会式の「10分前集合」もその背景から教えてあげるべきだ。

ソフトバンク入りした元メジャードラ1のカーター・スチュワートには大いに期待している。その資質は申し分なし。彼のこの先に不安があるとすれば、かつて指摘された手首の故障を含む健康面、そして全くの異文化体験だろう。

些細なことだが、こういうことの積み重ねが心配だ。

日本流の洗礼?!も受けた。集合時間は10時だが、時間ギリギリの最後に現れた19歳は、35歳の川島から「日本には10分前行動というのがあってね。これからはもう少し早く来るように」と“指摘”された。川島なりのジョーク混じりのアドバイスについて、「面白かったね」と振り返り、上田通訳は「僕が悪いです」と平謝りだった。

出典:ソフトB新外国人スチュワートが始動 日本のボールに好感触、日本流の洗礼も!?  スポニチ

現場を見たわけではないので断定的なことは言えないが、この記事の通りならスチュワートには全く理解不能だろう。どうして10時集合なのに9時50分に現れねばならないのか?その理由が明らかになっていない。

例えば、(正しいかどうかは別にして)「集合時間とは練習開始時間である。したがって、10時きっかりに全体練習を開始するには、そのウォームアップのために10分前に到着しておく必要がある」とか、

「日本では儒教の影響もあり、野球に限らずコーチングスタッフを敬う文化がある。彼らが現れるより先に選手は到着しておくのがリスペクトの意思表示で、これにより選手とコーチの秩序ある関係が保たれる」という風にだ。

個人的には、暗黙の了解の10分前集合に意味があるとは思えないが、スチュワートも郷に入れば郷に従えだ。ただし、それにはその理由をきちんと説明してあげねばならない。なぜなら、彼はまだ19歳。その空恐ろしい野球の才能を別にすれば、社会的にはまだベイビーのはずだからだ。

本件、「通訳氏が悪い」とするなら、それは10分前集合を事前に伝えていなかったことではなく、なぜ10分前集合が必要とされているのか、を伝えなかったことだろう。

スチュワートのキャラは全く知らないが、良い意味での鈍感力があれば本件などどうでも良い些細なことだ。しかし、こういう異文化体験の積み重ねが不信感や精神的な病に至ることは、在日外国人には良くあることだ。

万が一にでも、契約途中で「ボク帰りたい」にならぬようにするには、何よりも本人の異文化への関心や吸収意欲が大切だが、少なくとも言葉が理解できぬうちは、だれかが噛み砕いて教えてあげるべきだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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