巨人・上原、このタイミングでの引退により「引退試合」がないのは良いこと

そのキャリアの2度目のハイライト、2013年の世界一(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

巨人の上原浩治が引退した。日米を股にかけ、先発、中継ぎ、抑えとして活躍したこと、慢性的に故障に悩まされながら21年の長きにわたり44歳まで現役を継続したことは非常にエポックメイキングだったと思う。

彼のキャリアには2度の頂点がある。巨人でのルーキーイヤーで20勝を達成した1999年と、レッドソックスのクローザーとして大車輪の活躍を見せ、リーグチャンピオンシップシリーズでMVPを獲得し、ワールドシリーズで「胴上げ投手(実際にはリフトアップだが)」になった2013年だ。その間の年数の長さが、その現役生活の特異性を物語っていると思う。

上原の登板は日米を通じ何度も生で見ているが、個人的に印象深いのは2015年8月の出来事だ。毎年夏恒例の現地観戦のために成田空港に向かう車内で、上原がタイガース戦で打球を右腕に受けたこと、これによりそのシーズンの登板が絶望となったことを知った。その観戦旅行でのぼくの初戦はマイアミでのマーリンズ対レッドソックスだったが、その試合から、上原に変わって本来セットアッパーの田澤純一が「代魔人」起用されるも炎上した。極端に言えば、その試合以降田澤は精彩がない。

また、上原は当時40歳。年齢を感じさせない活躍を見せていたが、この故障を機にアメリカでの絶頂期が終了しパフォーマンスは緩やかに下降線を辿ったように思える。

今回の引退に関し思うところがふたつある。

まずは、このタイミングが良かったということだ。自身はシーズン終盤になり、優勝争いが過熱する段階での引退発表を避けたかったとコメントしているが、これにより結果的にNPBシーズン終盤の恒例行事である「引退試合」を避けることができた。それを彼が意図したかどうかは分からぬが、メジャーで長年過ごした上原には、マーケティング優先で真剣勝負とは程遠い日本特有のこの茶番はそぐわないと思う。

もうひとつはその報道に関してだ。彼の殿堂入りの可能性は大いに議論されるべきだが、昨日からウェブ上に溢れている一連の引退報道の中にその視点からのものがほとんど見当たらないのは寂しい。それだけ殿堂入りの権威がファンやメディアに認識されていない、ということなのだろう。

中には日米通算での100勝、100セーブ&100ホールドを評価し、名球会はその基準を再考すべきとする記事すらあったのに。プロのジャーナリストでさえ、殿堂入りよりも元々は親睦会でしかなかった名球会の権威を上位に置いている、というのは殿堂マニア?のぼくには厳しい現実だ。むしろ、ここまでの認知を得た名球会を褒めるべきかもしれないが。