「ダルビッシュ、FA可能の今季も不調」で狂ったカブスの皮算用

不本意な投球が続くダルビッシュ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

カブスのダルビッシュ有は現地時間10日、本拠地リグリー・フィールドでのパイレーツ戦に先発した。今季3度目で、シカゴのファンの前では初登板だった。

この日のアウティングをどう評価すれば良いだろう。5回1/3で2本塁打を浴び5失点(自責点4)で降板は、到底先発投手の、それも本来はエース級のパフォーマンスを期待されている者にとって、合格点をあげることができるものではない。

しかし、それ以前の2度の登板が悪すぎた。計6回2/3で11四球は「球道定まらず」というレベルではなく、イップスの域に入り込んでしまっているのでは、と心配になるほどだ。

6年総額1億2600万ドルプラス出来高という超ビッグな契約で迎え入れられたカブス初年度の昨季は、故障もあり期待を大きく裏切った。シカゴのファンから強烈なブーイングや厳しいツイートの攻撃を受け、やや精神的に参っている傾向も見られたからだ。

しかし、この日の投球には今後に期待を抱かせる部分もあった。それは無四球だったことで、全77球の69%はストライクだった。

しかし、大型契約に見合う内容とは言い難い。その契約の2年目となる今季は、ダルビッシュ本人にも、カブスにも重要な意味を持つシーズンなだけに、ここまでの不調は残念極まりない。

2017年オフにドジャースからFAとなったダルビッシュが、カブスと契約したのは2018年のキャンプイン寸前のことだった。

その高額の長期契約は驚きを持って迎えられた。そのオフは(翌2018年オフもそうだったが)FA市場の動きの鈍さが歴史的と言えるほどで、カブスはそのチーム作りにおいては若く才能溢れる野手を中長期的な核に据え、故障のリスクが相対的に高い投手は長期契約で囲い込むこと極力避け旬な実力派を都度獲得して行く(例外もある)、というものだったからだ。

このオフ、カブスからは2015年ナ・リーグサイ・ヤング賞投手のジェイク・アリエッタがFAで流出した。確かにカブスはアリエッタの穴を埋めるエース級を探していた。しかし、投手との長期契約を嫌うカブスにとって必要なのは、その先1~2年の戦力であり、トミー・ジョン手術歴のある32歳(当時)に6年もの長期契約はできればオファーしたくなかったはずだ。

その疑問は、彼との契約内容を理解すると氷解する。その6年契約は各年均等払いでなく、初年度は2500万ドルで最終年は1800万ドルとトップヘビーなのだ。しかも、2年目終了時点でダルビッシュに契約破棄の権利(オプトアウトという)が付帯している。ダルビッシュは最初の2年間にしっかり結果を出し自らの価値を上げれば、さらなる好条件を求めてFA市場に打って出ることができるのだ。

一方、この付帯条件は球団にとっても意味がある。投手との長期契約はリスクが伴うからだ。球団がダルビッシュに期待していたのは直近の1~2年にローテーションの中核として活躍してくれることだとすると、大きな故障に見舞われたり年齢的な衰えが見える前にこの権利を行使して早めに出て行ってもらったほうが良いという考え方もあるのだ。そのため、ダルビッシュにとってのうまみは契約後半には比較的少ない設定になっているのだ。

2018~19年の2年間に大活躍し自らの商品価値を上げる。そしてオプトアウト条項を行使しFA市場で一層の高額契約を手にする、これがダルビッシュにとって(少なくともビジネス的には)ベストシナリオなのだが、それはカブスにとっても美味しいところだけ享受し、痛い思いをするかもしれないそれ以降のリスクは回避するという点で同様なのだ。

ところが現実はそんな皮算用とは正反対になってしまった。今のままでは、このオフFAとなるのはダルビッシュにとって賢明ではない。そして、それはカブスが不良債権になるかもしれない残り4年間の契約を負担することを意味している。

もちろん、これから巻き返しの余地は十分残っている。まだシーズンは始まったばかりだ。その意味では10日のパイレーツ戦はどう評価すべきだろう。低迷が続いているとも、わずかに光明を見出したとも言えるが。