経済原則を無視した広島カープのチケット政策が招いた混乱

カープ人気は高まる一方だ(写真は都内での記念セールへの列)(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

広島の公式戦チケット抽選券配布に予想以上のファンが詰めかけ大混乱になったようだ。直接的な原因は抽選券希望者数の予想を誤ったことだが、もっと根本的な部分にも問題がありそうだ。

低価格で提供し続けたい、という妄想

そもそも今回抽選券の配布としたのは、先着順だと1ヶ月も前からテント持ち込みで並ぶ者も出てきて、中には転売目的の個人または業者も少なからず含まれていると思われたためだ。なるべく彼らを排除し本当のファンに購入してもらいたい、という方針自体は心情的には理解できる。しかし、転売ヤーを可能な限り排除する最善の策は転売が発生する余地を最小化することだ。

カープチケット争奪戦に転売ヤーがつけ入るのは、その需給バランスが著しく崩れているためだ。需要が完全に供給を上回っているのに、そうでない球団の価格と同レベルに据え置いていれば、その利ザヤに着目する輩が出てきて当然だ。厳しい言い方をするなら、これだけチケットを求めるファンが多いのに他球団と同じ価格レベルで販売しようとすることと、転売行為を排除しようとすることは完全に矛盾することに球団は気付いていない。

カープは、チケット価格を劇的に改定すべきではないか。それを球団は大いに躊躇するだろう。「人気にあぐらをかいてファンの足元を見るのか」という指摘も受けそうだ。しかし、それは間違っている。価格がその人気と供給量に対して安すぎるからこのようなことが起きるのだ。そういう非難をする者は、財の価格は需給バランスで変動するものだ、という経済原則を無視している、またはそれを知らない。

海外航空券やホテルの値段を例に出すまでもなく、供給量が一定の商品は需要いかんで価格が上下するのは決しておかしいことではない。人気が高いのに低価格で提供すれば、再販市場が過熱するのも道理だ。

再販を否定するのではなく制御することを目指せ

もっとも、完全に市場原理に委ねるのも適切ではない。投機市場のように極端に価格が変動するのも、プロ野球というエンタテーメントの特性にはあまりそぐわない。

以上を総合的に考慮すると、カープのチケット販売政策に最も必要なのは、まずは思い切った値上げだ。これである程度需給バランスを是正する。そして、次は年間シートの数を増やす。これにより、チケット再販市場への供給者を制御不能な不特定多数ではなく、ある程度球団サイドでコントロールできる特定多数に変換する。そして再販プラットフォームを球団自体が提供することだ(内製でも外部業者との提携でも良い)。年間シートを購入するほどの熱心なファンでも、さすがに全試合球場に足を運ぶのは難しい。したがって彼らのために行けない試合のチケットを売買できるインフラを球団が提供し、それに見合った手数料を取れば良い。

要約すると、価格は受給バランスで変動してしかるべきで、個人が入手したチケットを転売する行為自体は悪ではないという原則に立ち返る。その上で需給バランスを是正するとともに再販市場をある程度コントロールすることで、球団の利益確保とファンの利便性確保に努めるということだ。

最後に・・・今回のペーパーの抽選券の配布という行為はあまりに前時代的だ。これって、昭和の出来事ですか?と言いたくなる。カープは立ち遅れているウェブ対応にも力を入れて欲しい。