米野球殿堂入り「負け組」の薬物疑惑ボンズ&クレメンスに巻き返しの可能性?

現役時代のクレメンスとボンズ(写真:ロイター/アフロ)

米殿堂入り投票で、薬物疑惑の両巨頭であるボンズ&クレメンスへは今年も票が伸びなかった。彼らに残された資格年数はあと3年。このまま消え去りそうな気もするが、実はそうではない。

今年も伸びなかったボンズ&クレメンス

今年の全米野球記者協会(BBWAA)選出の米野球殿堂入り投票結果は現地1月22日に発表され、史上初の満票を得たマリアーノ・リベラら4人が選出されたのはご存知のとおりだ。ここでは、栄光の4人以外の「負け組」の象徴である薬物疑惑の両巨頭の今後を予想してみたい。

言うまでもない。それは、史上最多の通算762本塁打のバリー・ボンズと通算354勝のロジャー・クレメンスだ。彼らは今年も票を伸ばせなかった。それぞれ59.1%と59.5%と、前年からの上乗せは2ポイント台に止まった。これで、3年連続50%台で足踏みしていることになる。被投票権を保持できるのは最長10年間だ。果たして残り3年で、彼らは殿堂入りとなる75%まで票を伸ばせるのか。

投票者数は毎年若干変動するが、今回を例に取れば425人だ。両人とも75%に達するにはあと16ポイント近く必要で、これは人数に置き換えると68人。一般の候補者ならまだしも、彼らに対し「ノー」を突きつけていると思われる記者たちの中からこれだけ翻意する者が出てくるとすれば、ステロイド時代に対する歴史観に大きな変化が生じるような事態が起きた場合に限られるだろう。少なくとも、数字の上では相当厳しい。

今後あるかも「歴史観の変化」

しかし、その「歴史観の変化」が起きないとも限らない。ボンズ&クレメンスが最終年を迎える2022年には、あのアレックス・ロドリゲスとデビッド・オティーズが引退後5年を経て対象者となるからだ。ミスター薬物で1年間の出場停止処分も経験しているロドリゲスはともかく、オティーズの場合は通算541本塁打の成績は及第点で人格者として人気も高いことから、初年度での選出となる可能性が高い。しかし、決して見落とせない事実もある。

オティーズは、2003年にMLB実施した調査目的の薬物検査で陽性反応を示したことが2009年に明らかになっている。MLBが重い腰を上げ薬物規制と違反者へも罰則を導入したのは2005年だ。したがって、彼自身は違反を犯したわけではないが検査結果が陽性だったことは事実だ(オティーズ自身は、多くの陽性反応者がそうであるように、なぜ体内にそのような物質が入ったのか分からない、と主張していた)。

一方で、ボンズ&クレメンスは検査で引っかかったことは一度もない。彼らがシロだと信じる者は限りなく皆無に近いが、あくまで「疑惑者」の域であることは事実だ。したがって、オティーズに票を投じるならボンズ&クレメンスにも同様の対応としなければ整合性が取れない、と考える投票者が出てくると考えることは決して荒唐無稽ではない。

時代委員会に突き付けられる宿題

それと、もう一つ忘れてはいけない大事なことがある。それは、時代委員会経由での殿堂入りの可能性だ。

野球殿堂入りには2つのルートがある。ひとつが「王道」とも言えるBBWAAでの選出で、もうひとつが時代委員会経由だ。この委員会はBBWAA経由で資格を失ったいわば埋もれた名選手を発掘することを目的とするとともに、BBWAAは対象にしていない監督、審判、経営者などの選手以外もカバーしている。

そして、米殿堂入りにはよく知られた法則性がある。それは、BBWAAで一度でも得票率が50%を超えた者は、仮にBBWAAで最後まで75%に達しなくても最終的には時代委員会経由で選出(救出?)されているということだ(例外はこれまで1人だけ)。時代委員会経由で殿堂入りしたジャック・モリス(昨年)やリー・スミス(今年)などはその代表例だ。

ボンズ&クレメンスはすでに50%台に3度連続で乗せているだけに、将来、時代委員会のノミネート委員は彼らを俎上に載せないわけにはいかない。そして、投票権を持つ16人の委員(毎回その都度選任される)は、BBWAAがいわば先送りした難問を引き受けざるを得ないのだ。